北海道における成人期自閉症の実態 : 精神薄弱児者施設のアンケート調査から

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われわれは,北海道内の精神薄弱児者施設(精神薄弱児通園施設,重症心身障害児施設を除く)における成人期自閉症(満15歳以上)の実態調査を行なった。アンケートの調査項目は18項目であった。対象施設数183施設,回答数130施設で回収率71.0%であった。この結果,見出された自閉症者数は468名(男女比は,3.1対1)であり,これは各施設に在籍する満15歳以上の障害者全体の8.0%を占めていた。年齢構成は満15歳以上23歳未満の者が最も多く,義務教育終了後すぐに入所した者が多かった。過去5年以内の退所者は,122名であり,この内就職した者は2名であった。自閉症者の能力面は, IQ (DQ),言語理解・表現,生活習慣の自立等全ての項目において低位であった。成人期自閉症の状態像は,てんかん発作(有症率12.9%)・問題行動ともに施設在所中に改善が認められた。顕著な改善がみられた問題行動は,偏食,多動,睡眠問題であった。施設処遇における自閉症者の留意事項と指導方法として,居室・寮編成では,主に能力面と対人関係あげられ,日中の指導グループについては,作業指導と生活指導・機能訓練に大きく分けられていた。今後の自閉症者指導の方向の主な意見としては,他障害との混合集団での指導・作業指導・対象者の興味ある課題の設定や指導の工夫等による問題行動の改善や諸能力の獲得があげられている。また,現状では多くの施設が自閉症指導に困難を感じていた。自閉症者療育全般の課題として以下のことがあげられていた。第一に,早期療育の整備,第二に,学校教育への要望として,予後を見通した一貫した指導,第三に,教育・医療・福祉等の療育内容の充実と療育体系の確立,第四に家庭・学校・福祉・医療等の相互連携,第五に,成人期自閉症の施設処遇の充実。
北海道教育大学の論文
1988-03-15

北海道における成人期自閉症の実態 : 精神薄弱児者施設のアンケート調査から

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