塩蔵タラコおよび辛子メンタイコの製造工程中での成分変化および卵膜の構造変化

概要

論文の詳細を見る
塩蔵タラコおよび辛子メンタイコの製造工程中に起こる成分組成の変化と,卵巣,卵の形状および卵膜の構造変化を明らかにし,卵の内部構造の変化を観察する新たな方法として偏光顕微鏡法を提案することを目的とした。塩蔵タラコができるまでの塩蔵工程,それぞれの各段階での試料を採取し,卵巣と浸漬液の成分分析,卵巣と卵の形状・物性測定,官能評価を行ない,卵の内部構造をクロスニコル下での偏光顕微鏡により観察した。塩蔵工程における成分組成は,急速に変化して工程終了時にほぼ漸近値をとるような水分や灰分と,微量の変化が継続するようなたんぱく質,脂質(脂肪酸),糖質とに分類された。特に,灰分の多くを占める塩分の変化は顕著で,高濃度食塩水中で浸漬回転と加温,卵巣内容液の粘度低下が,NaCl分子の拡散速度を促進していると考えられた。調味工程においても同様,急速に変化したのは水分と灰分で,塩分は浸漬4日目にほぼ平衡状態になった。塩蔵工程で平面的な原卵が急速に球形化して,弾性率が増加し,調味工程では卵間の水分が若干増加し,付着性が低下した。卵の偏光顕微鏡観察により,光学異方性(分子配向を反映)が,塩蔵工程初期段階で急速に増大し,その後最終段階まではほぼ一定であること,卵が破損した場合も破損個所以外は分子配向は保たれることがわかった。従って,拡散によって卵巣内へ浸透したNaCl分子は卵膜の不可逆的な構造変化(例えば分子配向性の増加)を起こし,この構造変化が膜の弾性率を増し,卵膜の半透膜化するのではないかと推察された。
1997-08-20

塩蔵タラコおよび辛子メンタイコの製造工程中での成分変化および卵膜の構造変化

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク