スケトウダラ卵膜内部の分子鎖配向に及ぼす共存イオンの影響

概要

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本研究では様々な外部環境下での魚卵膜の構造変化を偏光顕微鏡法を用いて調べ, 特に溶液(イオン)環境の魚卵膜の構造に対する影響について明らかにする。サンプルとしてスケトウダラ原卵(真子)を用いた。浸漬液の組成については, 無機イオンとしてNa^+, Mg^<2+>, Fe^<3+>, Cl^-, SO^<2->_4,PO^<3->_4,また有機分子のグルタミン酸Na, グルタミン酸, クエン酸, 酢酸を溶質とした。経時的に偏光顕微鏡下で観察し, 干渉色からretardationを算出した。また, 画像解析法により卵の最大断面積(以下卵面積)および卵膜の厚さを測定した。その結果, スケトウダラ卵は, 卵膜にのみ分子配向がみられ, 特に2∿3重量%NaCl水溶液中でその配向が他のNaCl濃度と比較して高い。2.5重量%NaCl水溶液中でretardationは32分まで上昇し, 32分以降徐々に減少した。また卵面積は一度減少した後, 経時的に増大した。一方, retardationと卵面積との積が分子配向に比例することを明らかにし, この積は32分以降一定であった。各種イオン溶液中で観察した結果, 価数に注目すると陽イオン, 陰イオン共に価数の小さい方がretardationが高くなった。一価の有機陰イオンの例として, グルタミン酸Na溶液中においてもretardationは増加したが, NaCl程の上昇はみられなかった。グルタミン酸溶液中では, 膜厚の増加が食塩水の場合に比較して顕著に起こり, 卵膜には8層の層構造がみられた。同様の現象はクエン酸, 酢酸, NaOHにおいて観察された。グルタミン溶液中, グルタミン酸Na溶液中ではこれらの現象は観察されなかった。このことから一価の有機酸塩による卵膜の膨張と層構造の顕著な出現はH^+あるいはOH^-の影響であると推察された。
2000-02-25

スケトウダラ卵膜内部の分子鎖配向に及ぼす共存イオンの影響

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