薩摩鶏交雑ブロイラーに関する研究 : 第4報胸筋の筋脂質構成について

概要

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前報で作出した薩摩鶏交雑ブロイラー4品種の肉質の一端を調査する目的で前報とまったく同一の供試鶏より純筋肉として胸筋(Mm.pectorales)を日齢別, 雌雄別の各試験区ごとに24点採取し, Folch法により全筋脂質を抽出したのち, 硅酸カラムクロマトグラフィによりFraction I(主としてtriglycerides), Fraction II(主としてcephalins)およびFraction III(主としてlecithinsとsphingomyelins)に分画し, その脂質構成割合を調査し, 新鮮物中, 固形物中および全筋脂質中にとりまとめ雌雄別や日齢別による試験区別に比較を行なった.いまその結果についてのべると次のとおりである.まず雄胸筋と雌胸筋の脂質構成割合を別々に日齢ごとに試験区別に比較したが, 一貫した傾向は認められなかった.これは供試鶏がいずれも生長の途中にあるためと考えられる.次に雄全胸筋の脂質構成割合を試験区別に比較するのにFraction Iによりその肥育性をみると新鮮物中, 固形物中および全筋脂質中をとおしてSA×BP区が一貫して最高値を示し, SA×WR(A)区が最低値を示した他は一定の傾向は認められなかった.次に雌全胸筋の脂質構成割合を試験区別に比較するのに前同様にFraction Iでその肥育性をみるとSA×NH区が一貫して3位を示し, SA×WR(P)区が最低値を示した他は一定の傾向は認められなかった.以上の結果も供試鶏が生長の途中にあるため脂質に変動があるものと考えられる.次に各試験区における胸筋の脂質構成割合の雌雄別の比較では, その肥育性をみると63日齢の場合はSA×BP区以外は一貫して雌の方が高く, 70日齢の場合はSA×WR(P)区とSA×NH区が一貫して雌の方が高く, 85日齢の場合はSA×WR(P)区以外は一貫して雌の方が高い値を示した.しかし各試験区とも一定の傾向を示さなかったのは, やはり供試鶏が発育の途中にあるためと考えられる.次に全胸筋試料の脂質構成割合の試験区別による雌雄別比較ではその肥育性でみればSA×WR(A)区とSA×NH区とは一貫して雌の方が高値を示し, 他の試験区では雄の方が高値を示した.このように各試験区とも一定の傾向を示さなかったのはやはり供試鶏が生長中であるためと考えられる.次に各日齢時における胸筋の脂質構成割合を雌雄平均値により試験区別に比較してみると63,70および85日齢において, その肥育性はSA×BP区が他試験区に比べていずれも高値を示す傾向がみられ, 卵肉兼用種に薩摩鶏を交雑した方が肉用種に交雑したものよりも高い値を示す傾向が認められた.次に全胸筋試料の脂質構成割合の試験区別による日齢別比較では各試験区とも日齢の増加にともないその肥育性に一定の漸増傾向を示したものは認められなかった.これも供試鶏が生長の途中にあるためと考えられる.次に全供試胸筋の脂質構成割合の試験区別比較では, その肥育性は一貫してSA×BP区が最高値を示し, SA×WR(A)区がこれに次ぎ, SA×NH区, SA×WR(P)区の順であった.すなわち卵肉兼用種に薩摩鶏を交雑した方が肉用種に交雑したものよりもやや良い値を示す傾向がみられた.この成績は一般化学的組成では判らなかった各試験区の胸筋の若齢時における肥育性を示すものとして興味が深い.なお, cephalins, lecithins, sphingomyelinsなどの燐脂質は変動の幅も小さく, 各試験区とも一貫した一定の傾向を示したものは認められなかった.
鹿児島大学の論文
1976-03-20

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