キンシバイ培養細胞におけるアントシアニンおよびプロシアニジンの生産

概要

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キンシバイ(Hypericum patulum,オトギリソウ科)のカルス、懸濁培養細胞および不定根の各種培養系を確立した。それらの培養細胞の二次代謝物について分析したところ、2種のアントシアニン類と3種のプロシアニジン類の生産を認めた。それらの化学構造については、各種スペクトルデータの解析により、アントシアニン類はcyanidin 3-glucoside (Cy-G)とcyanidin 3-rutinoside (Cy-R)、プロシアニジン類は(-)-epicatechin, (+)catechinとprocyanidin B2とそれぞれ同定した。カルスおよび懸濁培養細胞を光照射下で培養したときのみ、Cy-GとCy-Rの生産が認められた。生産量に関しては、特にCy-Gの含量が高く、カルス培養においてはWP培地で0.13%(乾燥重量あたり)、1/2MS'培地では0.06%、懸濁培養細胞においては1/2MS'培地において0.51%の最高含量を示した。今回のキンシバイの不定根培養系の確立は、Hypericum属植物における不定根培養の初めての成功例である。キンシバイの不定根は、暗黒下での培養においては良好に生育したが、照明下ではほとんど生育しなかった。暗黒下での培養において、アントシアニン類の生産は認められなかった。カルス、懸濁培養細胞および不定根の各種培養系において生産されるプロシアニジン類は、(-)-epicatechinが主であり、procyanidin B2はその約1/3から1/2の含量であった。また、(+)-catechinは、懸濁培養細胞においてのみ若干生産されていた。懸濁培養細胞において認められた(-)-epicatechinの最高含量(1.48%)は、既報のデータよりもかなり高い値であった。培地からのNH_4NO_3の除去は、カルスや不定根の生育にはほとんど影響を与えなかったが、カルスにおけるアントシアニン類の生産が半分以下に抑制された。また、プロシアニジン類生産への影響については、カルスにおいてはほとんど影響が無く、不定根において若干の生産の促進が認められた。Hypericum属植物の成分については、プロシアニジン類とキサントン類に関する報告が過去数例あるが、アントシアニン類生産に関する報告は、本研究が初めてである。キンシバイの培養系は、アントシアニン、プロシアニジン等のC6-C3系のポリフェノール類の生合成研究材料として有用であるばかりでなく、抗酸化活性の期待される新しい食品添加物素材(アントシアニン色素)としての利用の可能性もあると思われる。
日本食品化学学会の論文
1998-06-30

キンシバイ培養細胞におけるアントシアニンおよびプロシアニジンの生産

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