調理実習における共同的な学び(第1報) : 知識・技能技術習得からみる指導のあり方
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概要
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中学校・高校の調理実習における発話記録とビデオ観察により。,生徒の参加行動状況,疑問の解決のし方,題材別の調理知識・技能技術の習得状況の実態,教師のかかわり方を考察し,共同的な学びの視点から教師の指導の方向性を検討した。1.調理実習への参加は実際に調理をおこなう行動と観察・相談する行動とその他があり,その割合はリーダー格の存在によって影響を受けていた。グループ内のリーダーの存在は実習行動に偏りが生じていた。また一方で,生徒の調理上の疑問を解決することに役立っていた。この2面性の機能を教師はふまえてグループを構成することが必要となる。すなわち共同的な学びを進めるためには強いリーダー的役割を設定しない方がよい。2.生徒間の相談によって調理の知識・技能技術の習得がおこなわれていた。生徒が調理実習で疑問をもつことや,技能技術の要点が話し合われるための教師の働きかけが必要となる。疑問が全くでないような綿密な教師による説明,示範,役割分担はグループ員の共同性を低くする要因になることが示唆される。3.でき上がりの状況がわかりにくい調理操作に関しては,作業の混乱を起こさないための指導が必要である。指導には発達段階や生活経験や操作状況によって,生徒自身で解決させるものと教師による示範が必要なものとが存在し,それを分別する判断が教師に求められる。また,中学生や高校生にとってプリントによるだけの伝達には限界がある。4.生徒同士の相談だけでは習得させたい重要なことがらが脱落することがある。普遍化する力をつけるためには調理科学を取り入れた指導と疑問をもつような働きかけが必要である,その指導のし方が検討課題となる。5.共同性を高めるためにはひとりでおこなわれやすい調理操作に関してはあらかじめ共同共有させる指導が必要である。6.実習中の教師の机間指導にはタイミングと支持のし方が重要であり,タイミングについてはどこで生徒がつまずくか見通すことが必要となり,支持のし方として思考を促す言葉かけや評価が必要とされる。本研究の結果から,調理実習における知識・技能技術の習得について,生徒の共同的な学びをつくるには教師の意図的な手立てが必要であり,共同性を高めるために教師の指導のあり方が重要であることが明らかとなった。そして,生徒の共同的な学びを通して調理知識・技能技術の習得を高めるには,共同性と指導の方法との関係性を明確に把握しなければならないと考える。
- 日本家庭科教育学会の論文
- 2003-07-01
著者
-
河村 美穂
埼玉大学
-
小西 雅子
東京ガス(株)
-
河村 美穂
埼玉大学教育学部
-
武藤 八恵子
元・福島大学教育学部
-
石井 克枝
千葉大学教育学部
-
川嶋 かほる
埼玉大学教育学部
-
武田 紀久子
東京都立短期大学(非)
-
武藤 八重子
元福島大学教育学部
-
小西 史子
佐賀大学文化教育学部
-
河村 美穂
東京都立井草高等学校
-
小西 雅子
東京ガス(株)基礎技術研究所
-
武藤 八恵子
東京都立立川短期大学
-
武田 紀久子
東京都立立川短期大学
-
武田 紀久子
東京都立川短期大学
-
武藤 八重子
福島大学名誉教授
-
武田 紀久子
東京都立短期大学
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