本態性低血圧症の循環動態と神経・体液性因子の調節障害 : とくに起立性調節障害を中心に

概要

論文の詳細を見る
慢性本態性低血圧症(EH)58例,健常群(C)22例において,臥位および立位時の循環動態を非侵襲的に求め,それらの異常を生ずる神経・体液性調節機転障害を調べた。EHでは安静時,低CO型と正常型が各40%以上を占め,低TPR型は少なかった。しかし,低CO型でも正常型でもTPRの低下傾向を認めた。このさい低CO型と正常型で血漿adrenaline (A)が,また,すべての型で血漿noradrenaline (N)の日内変動が低値であった。起立性降圧を伴う例を能動的ないし受動的に起立させたさい,COの減少とTPRの増加が,とくに定型的な"hypotone"型を示す群で著明に出現した。この循環動態の異常化を生ずる背景には,容量受容体反射ないしbaroreceptorの低下があると思われ,静脈帰流減少に基づくHRの増加,および降圧に基づくHRの増加反応は弱まっていた。また,この群ではAとNの日内変動値が低く,立位時のN値が低く,交感神経系の活性が低下していた。PRAの日内変動値も低かった。hypodyname型では,能動的起立時にCOが増し,TPRは変化しなかった。EHの心筋収縮性と運動負荷時にLVEFを高める能力には異常がなかった。なお,EHの循環動態およびその調節機転は健常群と大きなオーバーラップを示した。
北里大学の論文
1987-10-31