クモ膜下出血急性期における左室壁運動異常と肺水腫の発生について

概要

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クモ膜下出血(SAH)急性期に認められる左室壁運動異常(LV ASYN)と肺水腫の成因および病態について検討した。発症24時間以内の破裂脳動脈瘤によるSAH 494例に心エコー検査を行い, LVASYNを48例(9.7%)に認めた[ASYN (+)群]。これを, LVASYNを認めないSAH 446例[ASYN(-)群]と比較した。LVASYNの出現率を両群で比較すると年齢には差はなかったが, ASYN (+)群で女性の割合が有意に高かった。LV ASYNはWFNS分類による重症例に多く出現し, Fisher分類によるSAHの程度とは関係しなかった。来院時ASYN(-)群に比べASYN (+)群では収縮期血圧の低下と心拍数の増加が認められ,肺水腫の出現率はASYN(+)群で有意に高かった。また,ASYN(+)群では来院時の肺動脈圧,肺動脈楔入圧は有意に高く,心係数および左室駆出率(EF)は低下していた。とくに肺胞水腫発生群で肺微小循環内圧が著しく高値を示した。急性期死亡例を除き1〜15日(6±4日)後に,循環動態の異常は改善した。SAHによりcatecholamineの分泌が増加し,肺血管透過性を高めると思われるが,同時に左室筋に可逆的な障害を与え,肺微小循環内圧を上昇させることにより肺水腫を起こす原因となりうると思われた。
北里大学の論文
1995-02-28