急性心筋梗塞回復後の右心不全発生のメカニズムに関する循環力学的研究

概要

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左室に起因するうっ血性心不全の発生機転は,普通うっ血が肺脈管を介して左房から右心へと進行するためと考えられている。また,心室中隔を介して左室への負荷が右室へ影響を与えることも知られている。しかし,左室疾患でありながら肺動脈楔入圧(PMP)の上昇や肺うっ血所見が明らかでないにもかかわらず,右心不全徴侯の出現することが少なからず経験される。そこで,我々はこのメカニズムを解明するために,心筋梗塞(MI)回復期例を対象として両心の循環動態を心カテーテル法と左室造影法で調べた。MI46例中11例は左室駆出分画(LVEF)が45%未満でPWPも高く,後方不全の準備状態にあった。残りの35例はLVEFが45%以上でPWPも正常群と差が無かったものの,その22例は肺脈管抵抗および脈管抵抗比が増加しており,平均肺動脈圧が高く右室に圧負荷をかけていた。これらの多くはMIの急性期に心不全徴侯を示したことより,過去の肺うっ血が器質的な肺血管障害を生じ,その後の経過中に右心不全を生ずるメカニズムを説明するものと考えられた。
北里大学の論文
1992-02-29