本態性高血圧症の左室肥大・拡大発現と左心機能の変化について

概要

論文の詳細を見る
高血圧症の初期には高心拍出量型も現われるが,進展とともに抵抗亢進型となって圧負荷が左室肥大を作り,ついに左室拡大が著明化してhypokmetic circulationを生ずるようになる。そこで,本態性高血圧症105例,健常24例の循環動態と心の形態学的変化を,polygraphicな手法および心エコー法を調べて対比した。左室ポンプ機能は心拡大が生ずるまでは正常に保たれ,拡張期機能は初期から異常化した。肥大を認めぬ初期(I期)では昇圧が収縮期左室壁応力(WS)を上昇させ,肥大の発生によりWSは正常化し,TPRが高まり心拡大が著明化するとWSは再び上昇した。このさい,肥大は平均駆血速度を増し,TPRの上昇に打ち勝ち心ポンプ機能を維持した。WS-収縮終期径関係の勾配(心筋収縮性)は,I型で最大,II型(対称性肥大)とIII型(非対称性肥大)ではI型と健常との中間にあった。IV型(心拡大)の直線は, I型に類似し,心筋収縮性の低下を認めず,afterload mismatchにより,心ポンプ機能低下が発生しうると思われた。
北里大学の論文
1982-06-30