人造米による製麹過程とその化学的変化について

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すでに人造米が米代用として市販され,またこの需要もかなり広く利用されてしる状態であるが,さらに日常副食物の原料として使用されている味噌,醤油におげる米麹の代用についての価値を見出すために,試験を行つた結果について摘要すれば次の如くである。1.十勝米及び道産米との成分的差異をみると,十勝米は道産米に比して水分,脂肪ともに少く,これに対して蛋白質,炭水化物はともに多く,また1升重量は道産米の方がやや重い。2.両米の吸水量及び浸漬時間においては,十勝米の方は5分以上の浸漬は宜しくない。したがつて吸水速度を極めて早くし,15分で吸水が40〜45%に達するように処理しなければならない。一度に40〜45%の水を浸漬できないから,20%,10%,10%,5%というように分割撒水する。水の損失を考えると必ずしも40〜45%にはならず,今回の試験では37.67%となつている。道産米の浸漬時間は,20時間であり,米が充分に氷に浸る程度まで水をいれる。後2時間水切りを行うが,吸水量は33.1%である。3.製麹操作についてみると,十勝米の方が品温の上昇がかなり早いことが認められる。麹菌は40℃を越えると菌の作用が鈍つてくるために,温度が40℃前後に上昇すると切替しを行わなければならない。破精込みも,麹菌の繁殖もともに十勝米の方が早い。4.製麹中の化学的変化においては,水分はいずれも原料米から出麹になるまでほとんど変化がない。糖分の生成は十勝米の方が多く,澱粉及び糊精は,十勝米は原料そのものが澱粉及び小麦粉によつてできているために,出麹でも多くなつている。また総酸も若干多い。5.麹の酵素力を検定してみると,糖化力及び蛋白分解力において道産米は,十勝米に比して若干優れている。以上のように十勝米は,道産米に比べて製麹操作に関して大きな優劣はなく,ただ原料処理と製麹方法などについて,さらに技術的な研究を行えば,味噌,醤油などの原料としても活用できると思われる。
1956-03-30

人造米による製麹過程とその化学的変化について

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