北海道の自然草地における植生の草地生態学的研究 : II.桧山国上ノ国町八幡草地

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北海道の南部地域における短草型植生より成る代表的な自然草地において1957年,1958年および1968年に草地生態学的調査を行なったが,その結果を要約するとつぎのごとくである。1.この自然草地はおおむね300年前より放牧に供されており,北海道においてはもっとも利用歴史の古い草地である。植生はシバ,シバスゲを主とする短草型植生である。草地面積は559.02ha,近年(昭36〜40年)そのうち200haは集約草地,20haは蹄耕法によって牧草が導入されてきた。草地利用は古くから馬の放牧が主であったが,最近は肉牛(日本短角種)も放牧されている。放牧期間は5月上旬から10月下旬に至る約6ヵ月間である。気象は比較的温暖であるが,海岸高台地であるため風当りが強く,積雪量は少ない。土壌は植壌ないし砂壌土であってpH(H_2O)は6.2,pH(KCl)は5.5,置換性石灰0.30%,置換性苦土100mg,燐酸吸収係数は1400〜1800である。2.1957年における調査 10本のラインインターセプション法(線長15m)に出現した草種は42種である。シバ,シバスゲの優占度は高く,シバの積算優占度は50.80%,シバスゲのそれは47.34%,ファイトグラフインデックスはそれぞれ25.61%,22.28%である。3.1958年における調査 10本のラインインターセプション法(線長5m)における出現草種は60種(L_1-L_5)と48種(L_5-L_l0)であり,前年の調査に比してやや多い。シバ,シバスゲがもっとも優占度が高く,5箇のコドラート(Q_1-Q_5)では前者の積算優占度が77.5%,後者のそれは81.9%,ファイトグラフインデックスはそれぞれ59.8%,63.7%である。他のコドラート(Q_6-Q_10)ではシバの積算優占度が81.4%,シバスゲのそれは79.4%,ファイトグラフインデックスはそれぞれ66.14%,58.75%である。コドラートの大きさと植生との関係についても調査を行なったが,これらの結果から草量と他の測度との関係を明らかにするため草量と他の測度の相関関係を求めた数値を示すと右表のごとくである。このようにシバ植生では草量と被度,草丈,草高ともに高い正の相関があり,移行植生では草量と草丈および草高の正相関が高いことが明らかとなった。[table] 4. 1968年における調査はじめて植生調査を行なってからほぼ10年後の植生もシバの高い優占度には変わりがない。シバのほか,ワレモコウ,シバスゲ,アリノトウグサなどがこれについで優占している。数年前から放牧を中止したところではエゾヤマツツジなどの灌木類,ススキ,ワラビなどの長草型とかワラビ型がみられる。また海岸採草地でもハチジョウススキ,イタドリなどの長草型植生であるが,常時放牧しているところはシバ,ヤマカモジグサ,クサイなどの短草型植生に遷移している。放牧地ではシロクロバー,アカクロバー,オーチャードグラス,チモシーなどの侵入もみられる。以上のごとく,この自然草地における植生は長い年月の放牧によってシバ,シバスゲなどの短草型植生と化し,草地生態学的にみて最終の階梯にある状態である。
帯広畜産大学の論文
1969-09-30

北海道の自然草地における植生の草地生態学的研究 : II.桧山国上ノ国町八幡草地

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