高齢者疑似体験の学習効果とその限界 : 家庭科教育における体験学習が高齢者理解に及ぼす効果そのI(自然科学編)

概要

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近年,小・中・高校の家庭科教育においては,学習指導要領の改訂ごとに,「高齢者の生活と福祉」に関する学習事項が増強されている.とくに,高等学校では総授業時数の過半数を実験・実習に配当するように求められており,高齢者学習においても,体験的に学ぶ手法の開発が必要とされる.本研究で実施した高齢者疑似体験は学校現場でも取り入れられようとしており,教員養成教育においてその実施と効果の確認が必要となってきた.本研究は,家庭科教員免許取得をめざす本学2,3年生に対して,市販装具を用いた体験授業を実施し,その効果を事後の自由記述感想文の分析から探ろうとするものである.その結果,(1)高齢者の行動や心情に対する理解が深まり,(2)援助行為や環境改善への意欲がみられたこと,教師としての自覚が養成されたことなど,プラス効果が大きいことから,実践的な態度を重視する家庭科教育において本実習は有効な手法であることが確認された.一方,(3)固定した高齢者観を形成するおそれもあることが危倶された.これについては講義等での補完が必要と考えられる.
九州女子大学・九州女子短期大学の論文