絹繊維の可視二色性(第1報)(自然科学編)
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概要
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種々の繊維の中でも特に染色性の優れている絹繊維が、引張りにも意外と強いという相反する性質を解明するため、両性質に関係する分子配向の形態を非結晶領域の可視二色性により研究した。可視二色性で非晶領域の配向を検討する場合、測定に使用する染料の染着機構が問題となるのであるが、絹染色に対する酸性染料の知見がなく、まず使用染料を検討し、Acid Blue 113が最適であることを見いだした。各種精練絹糸の結晶・非晶領域全体の配向度foと非晶領域の配向度f_Dを求めてみると、一般的に行われている自由状態でのマルセル石鹸精練による絹繊維ではfo=0.816、f_D=0.660となり、分子配列の良い部分は結晶領域を、分子配列の悪い部分は非結晶領域を構成していることを確認した。また、緊張のかかった圧力足長精練絹糸ではfo=0.838、f_D=0.327となり、マルセル自由精練絹糸よりf_Dが大きく低下しているのに、foが向上している。これは非晶質の内部溶出と同時に再結晶化を生じ、分子配列の良い部分が拡大され、溶出した領域の分子配列はいっそう乱れるためであろう。蚕児体内より取り出した液状絹の延伸凝固において、人工的に最大延長であった15倍延伸絹フィブロインはfo=0.772、f_D=0.695であり、絹繊維よりfoは低い配向を、f_Dは高い配向を示している。これは流動性のため結晶化に時間がかかり、結晶生長にともなって非晶鎖は結晶部分に繰り入れられ非晶配向は向上し、結晶の配向は緊張緩和にともなって瞬間配向時より低下するものと思われ、吐糸繊維化機構と人工的な繊維化機構の差異が推定される。
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