N, N-di(2-chloroethyl)-4-methyl-2,6-dinitroanilineの毒性に関する研究 : I.亜急性毒性について
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概要
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N, N-di(2-chloroethyl)-4-methyl-2,6-dinitroanilineを, ラットでは0(I群), 60(II群), 180(III群), 540(IV群), 1,620(V群)ppmの割合で, マウスでは0(I群), 20(II群), 60(III群), 180(IV群), 540(V群), 5(VI群)ppmの割合で餌に混合したもので13週飼養し, その毒性を対照と比較検討した.1.動物の途中死亡数は, 各群♂, ♀各20のうち, ラットではV群♀の1匹のみ, マウス♀ではV群の3匹のみであったが, マウス♂ではII群3,III群5,IV群15,V群19,VI群7匹であった.2.飼料の摂取状況は, ラットでは高濃度群ほど悪い傾向が認められたが, マウスでは一定の傾向はみられなかった.3.飲水摂取量は, ラットではV群がとくに多かったが, マウスではむしろ高濃度群の方が少ない傾向を示した.4.薬物摂取量は, ラットでは♀は♂よりやや少なかったが, マウスでは♂と♀とでほぼ同様であった.5.体重増加率は, ラットではIV群が試験の後半から, V群は比較的早い時期から低下した.マウスではVI群とII群の♀以外は, すべての群で増加率の低下を示した.6.血液学的検査では, とくに薬物による影響と思われる変化は認められなかった.また血漿A/G比, 尿素-N, GOT, GPT, ChEにおいても, 薬物によると断定できるほどの変動はみられなかった.7.臓器重量では, 二三増減のみられる臓器もあったが, もっとも著しい変化はマウス精巣の低下であった.8.ラットにおける病変の主なものは, 肝のうっ血, 腎の硝子滴変性, 尿石(♀のみ), 肺の気管支周囲炎, 血管周囲リンパ球浸潤などであるが, いずれも中毒病変ではない.マウスでは, 肝細胞腫大, 肺炎, 肺充出血, 血管周囲リンパ球浸潤, 気管支周囲濾胞腫大, 精巣の間質細胞増殖, 精細胞エ死, 無精子などが主な病変であったが, このうち精巣病変が本薬物のもっとも特徴的所見である.以上本薬物は毒性的にみて, きわめて興味ある化合物であり, ラット♂, ♀, マウス♀に対しては, とくに問題となるほどの毒性を示さない.体重増加率, 臓器重量, 病理組織学的所見などからみて, ラットに対しては飼料中540ppm, マウス♀に対しては180ppmが, 最小中毒量とみられぬこともないが, 最高濃度のラット1,620ppm, マウス♀540ppmでも, 必ずしも確実中毒量とはいえない位の作用しか示さない.ところがマウス♂に対してのみ強烈な作用を示し, とくに精巣に対しては著しい影響を与える化合物と考えられる.すなわち飼料中5ppmでも必ずしも最大安全量と断定することはできず, 20ppmはすでに確実中毒量とみなすべき結果が得られた.
- 鹿児島大学の論文
- 1976-03-20
著者
-
石黒 茂
家畜薬理学研究室
-
河野 猪三郎
家畜病理学研究室
-
河野 猪三郎
Laboratory Of Verteinary Pathology
-
安田 宣紘
Laboratory of Veterinary Pathology
-
宮尾 陟
Laboratory of Veterinary Pharmacology
-
石黒 茂
Laboratory of Veterinary Pharmacology
-
宮尾 陟
前鹿児島大学
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