牛におけるサイカシンの影響に関する実験的研究

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2頭の牛にサイカシン2.5mg/kg〜5mg/kgを肝機能検査を指標に断続的に経口投与し, 臨床的, 血液学的, 血液生化学的および病理学的検査を行った.総投与量は第1例が59日間で42回投与し, 16.01g.第2例が52日間で40回投与し, 21.67gとなった.2例とも元気, 食欲の減退あるいは消失がみられ, 増体重の低下や減少を認めた.しかし, ソテツ中毒牛にみられるような中枢神経系の障害に起因すると思われる運動障害は認められなかった.血液学的には, 第1例においてHt値.赤血球数の減少傾向が認められた.また, 血液生化学的には, 2例ともGOT, Al-p, γ-GTP, LDH, total bilirubinの上昇, アルブミンの減少, γ-グロブリンの増加およびA/G比の低下がみられた.病理解剖学的には, 第1例に貧血と出血傾向, 第2例に黄疸を認めた.両例とも肝臓は褪色し, 萎縮硬化著明で, 病理組織学的には線維増殖が著明で, 中心静脈や類洞は狭窄し, 肝細胞索の乱れ, 肝細胞の単離, また, 肝細胞ならびに核の大小不同(megalocytosis), 小胆管増生が認められ, 第2例では胆栓の形成が認められた.第1例にクッパー細胞, 肝細胞, 近位尿細管上皮および脾臓にヘモジデリンの沈着が顕著であった.第1例の骨髄には赤芽球系, 血小板系の造血能低下を認めた.両側とも中枢神経系には肉眼的に異常を認めなかったが, 組織学的には両側とも広汎な海綿状変性が認められた.その分布は, 脳幹網様体, 小脳核周囲に強く, 終脳や脊髄の灰白質と白質の境界部および脊髄の灰白質にも認められた.以上の結果から牛は予想以上にサイカシンに対して強い感受性を示し, 強い肝障害に伴う肝性脳症を呈したものと思われ, サイカシンの直接的な神経毒性は今回観察されなかった.さらに低い投与量における検討が必要であろう.
鹿児島大学の論文
1987-03-16

牛におけるサイカシンの影響に関する実験的研究

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