牛の実験的ソテツ中毒に関する病理学的研究

概要

論文の詳細を見る
沖縄県下の放牧牛にみいだされた後躯異常を呈する疾患が, ソテツ葉の採食による中毒性疾患であることを実証するために, 2頭の黒毛和牛にソテツCycas revoluta Thunb.を実験的に投与し, 臨床的, 血液生化学的検査および病理学的検査を行ったところ次の結果をえた.1.第1例が投与量1.49g/kg/day, 投与期間36日で, 第2例が投与量1.38g/kg/day, 投与期間82日で自然発症例と同様の後躯の運動障害が発現した.ソテツ葉の総投与量は, それぞれ9465g, 18740gであった.2.血液生化学的には, 投与直後にγ-GTPの一過性の上昇とChEの低下する傾向がみられた.3.病理学的には, 自然発症例とほぼ同様の脊髄病変を示した.発症後長期間経過した第1例は, 空胞形成, fibrillary gliosisを主体とする変状を示し, 発症後短期間の第2例は, 空胞形成, spheroid bodyの出現を主体とする変状を示した.これらの病変像の違いは, ソテツ葉の投与量とは関係なく, 病変の進行の度合, すなわち病変発生時からの経時的な差によるものであることが判明した.4.わが国に自生するソテツ種Cycas revoluta Thunb.の葉の採食により牛のソテツ中毒症が発症することが実験的に確認できた.
鹿児島大学の論文
1985-03-15