一農家に多発した子牛の象皮様病変を主とする致死性中毒症

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黒毛和種繁殖経営の一農家で, のべ3年間に子牛のみ11頭が, 生後数日から3カ月以内に, 角化亢進による皮膚の象皮様病変, 口腔や舌の潰瘍性結節と白色隆起, 発熱のない緑褐色粘稠性軟・下痢便, 著明な発育不良を示した.種々な治療にも反応せず, しだいに衰弱し, 起立不能となり, 生後77〜252日ですべて淘汰された.6頭の母牛はいずれも健康で, 血液検査でも著変はなく, 繁殖や分娩も良好であった.血統や年齢, 産次数に共通性はなかった.子牛の父牛は5頭に分布し, 血液検査では, 血漿総蛋白含量の低下と強い肝機能障害が共通していた.病理学的検査では, 皮膚と舌の角化亢進, 食道の潰瘍, 第4胃の出血や潰瘍, 胆嚢腫大, 肝の灰白色斑多発・線維化, 腎変性などが共通してみられた.病理組織学的検査では, 皮膚と舌の上皮角質層の著明な角化亢進, 有棘細胞層の変性と乱れ, 肝の小葉間結合織の増生と小胆管の増殖, 腎の遠位尿細管と集合管の拡張などがみられた.これらの所見から, 原因として遺伝的要因や微生物などの感染要因は否定され, 何らかの中毒性疾患が強く疑われた.本病はとくに塩化ナフタレン中毒に非常に類似していた.そこで土壌や臓器, サイレージ, 自生植物について有毒物質の検索を試みたが, いずれも失敗した.本病は子牛のみに集中的に発生した, 皮膚病変を主とする特異な疾病である.
鹿児島大学の論文
1994-03-25

一農家に多発した子牛の象皮様病変を主とする致死性中毒症

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