マウスならびにラット肝tryptophan oxygenaseの特性上の差異について
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概要
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マウス肝TOをラット肝TOと比較検討した結果, 著しく異なる所見が得られた.1.マウス肝TOのKm値はラットのそれと比較して低く, 0.15×10^<-3>Mである.2.マウスにおいては基質誘導, ホルモン誘導ともにラットに比較して弱い.3.in vitroでheminを添加することにより, ラットでは活性が上昇するが, マウスでは活性増加がほとんどみられない.またheminの注射により, ラットではかなり活性が上昇し, アポ酵素のホロ酵素化が認められる.マウスでも活性は上昇するが, 生理食塩液を注射した場合の増加活性値と同じであり, アポ酵素がホロ酵素化するというよりも, ストレス性の増加であることを示唆する結果が得られた.4.基質とTOとの反応初期にみられる不応期は, 基質を投与したマウス肝TOでは消失するが, in vitroでhomogenateにheminを添加した場合には, 消失が認められない.5.基質によるTOの誘導はラットでは少量のほうが効率が良いことが観察されているが, マウスでは投与量に比例した活性値が得られた.6.Try注射後のタイムコースは, ラットでは5時間後にピークをもつ一過性の変化であるが, マウスでは30分と5時間後にピークをもつ二相性の変化を示し, 5時間後のピークはethionine投与により約30%阻害されるが, 30分後のピークはほとんど阻害されない.また副腎摘出マウスでは, ピークは一つとなり, Try投与2時間後に認められた.7.hydrocortisone注射後, 無処置マウスでは投与3時間後に, 副腎摘出マウスでは5時間後にピークが認められた.8.副腎摘出によりラットではTO活性値の低下が認められるが, マウスでは認められなかった.9.マウスを固定した後5時間のTO活性値は, 約2.6倍に増加した.10.炎症関連物質であるhistamine, 5-HTによって, マウス肝TOは影響されないがhistidineは活性を上昇せしめ, この上昇は副腎摘出マウス肝でも認められた.11.マウス肝TO活性がMt, Ms画分に存在しないことはラットと同様であるが, cell sapの活性は, ラットではhomogenateの約1/3であるのに対して, マウスではほとんど同程度の活性を示した.12.cell sapにMt画分を加えても活性に影響はないが, Ms画分を加えることにより活性は著しく上昇する.またcell sapでは, hemin添加により活性の上昇がある程度認められるが, cell sapにMs画分を加えると, homogenateと同様, hemin添加による活性の上昇は認められなくなった.13.マウス肝にはラット肝の約倍量のprotoporphyrinが存在する.14.in vitroにおけるglobinのマウス肝TO阻害作用は, ラットに比べて弱く, globinの阻害作用に対するheminの回復効果もラットに比べて弱い.15.マウス, ラット肝のcell sapにAMP, adenosineを添加することにより, 活性増加が認められ, その増加率はマウスのほうが大であった.16.肝cell sapへのXOの添加は, TO活性に影響を示さなかった, またマウス肝XO活性は, 雄ではラットに比べて有意で低かったが, 雌では差がなかった.17.肝cell sapへのallopurinolの添加により, ラットでは, TO活性阻害が認められるが, マウスでは逆に活性増加が認められた.以上の結果から, 正常マウス肝はラット肝に比較して, アポTOが極めて少なく, 不活性なホロTO(あるいは潜在型TO)の多いことが示唆された.
- 鹿児島大学の論文
- 1979-03-19
著者
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