N, N-di(2-chloroethyl)-4-methyl-2,6-dinitroanilineの毒性に関する研究 : II.毒性に対する副腎の関与について
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概要
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前報で認められたN, N-di(2-chloroethyl)-4-methyl-2,6-dinitroanilineのマウス雄のみに対する著しい毒性について, その毒性に果す副腎の役割を知る目的で, さらに詳細な実験を行い, 次の結果をえた.1.腹腔内投与されたTorpedoは経口投与の場合と同じく, マウス雌にはほとんど毒性を示さず, マウス雄に対しては特異的に, 精巣, 精細管の萎縮, 間質の減少, 精子形成の減少(無精子), 精細胞の壊死, 消失をひきおこした.また他の薬物と同じく, 経口投与より腹腔内投与の方が, 毒牲が強く現れた.2.ラットでは相当大量を投与しても, マウスにおけるような雌雄による性差は認められなかった.3.Torpedo投与雄マウスの繁殖能力ほ著明に低下した.4.Torpedo投与雄マウスの精巣抽出物は, マウス雄, 雌に何ら影響を及ぼさなかった.5.雄マウスに対するTorpedoの毒性は去勢により減弱し, 去勢後testosterone処置により再び増強した.6.雄マウスにestradiolを投与した場合のTorpedo の毒性は, 大した変化を示さなかった.7.副腎摘出により, 雄マウスに対するTorpedoの毒性は滅弱する傾向を示した.8.TorpedoはマウスのTP活性を増加せしめ, 投与量が多くなるにつれ, TP活性も増加した.9.TorpedoによるTP活性の増加は投与後6時間が最高で, 12時間後には正常レベルにもどった.10.去勢によりTorpedoによるTP活性の増加は低下し, 去勢後4日と2週後では, 後者の方が著明に低下した.また去勢後testosteroneを投与すると, TorpedoによるTP誘導は回復した.11.副腎摘出により, TorpedoによるTPの誘導活性は完全に阻止された.12.Torpedo 1回投与後と連続投与後のTP活性の増加は後者の方が低く, このとき雄より雌の方がより低下した.以上Torpedoの毒性はマウスの精巣に主作用を有し, その作用に副腎が関与すること, またラットにみられる薬物代謝酵素の場合とは同一視できないが, タンパク同化ホルモン(testosterone)が生体の感受性の因子として働くことが示唆される.
- 鹿児島大学の論文
- 1977-03-19
著者
-
石黒 茂
家畜薬理学研究室
-
宮尾 陟
Laboratory of Veterinary Pharmacology
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石黒 茂
Laboratory of Veterinary Pharmacology
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三浦 徳明
長崎県中央家畜保健衛生所
-
宮尾 陟
前鹿児島大学
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