清酒酵母におけるVI番染色体左腕の末端
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概要
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前報までの研究で清酒酵母には同じS.cerevisiaeに属する他の醸造酵母と比べて次のような特徴があることを明らかにした.(1)I番, VI番, IX番染色体が他よりも大きい.(2)SfiIはVI番染色体の右端から一般には20kbの断片が切り取るが, 清酒酵母では30kb, 50kbの断片の一方, あるいは両方を切り取る.(3)NotIは近縁酵母のVI番染色体には働かないが70年以上前に分離された株を除く清酒酵母では, 左端から9kb, 16kbの断片の片方または両方を切り出す.本報ではこのうち(3)の意味を探るためにNotIで切り出される断片の起源について検討した.清酒酵母K7のVI番に由来する9kb, 16kbの両断片をプローブとするサザン解析から, 両者は基本的に同じ配列からなり, VI番以外のいくつかの染色体とも, またある程度はこれらを切り取った後のVI番ともハイブリダイズすることが分かった.9kbの断片は他の染色体からも得られ, そのクローニングにも成功したので, 同断片をプローブとするサザン解析を行った.このプローブは程度の差は大きかったものの, 基本的にはSaccharomyces sensu strictoに属するすべての酵母の全染色体とハイブリダイズした.この断片を制限酵素で二分して検討した結果, その一方の約4.8kbの断片はどの染色体とも反応したが, 他方は一部の染色体とだけ反応した.したがって9kb断片はテロメア独特の配列を持つ部分と, より特異的な配列とから成るものと思われる.前者のシグナルは全供試株の全染色体にほとんど一律に認められたが, 後者のシグナルの強度は著しく多様であった.Saccharomyces全体についてみると, ビール酵母だけが弱いシグナルしか示さない点で例外的であった.特異的な配列は通常VI番をはじめIX番など複数の染色体とよくハイブリダイズしたが, 清酒酵母のうち古い分離株ではむしろI番, III番などと反応した.いずれにしてもこのような末端は, 前報でも述べた通り容易に他の染色体へ移動出来ると思われる.以上の結果から清酒酵母のNotI断片に含まれる配列は, その原型から非常に長い時間を経て現在のようなものに進化してきたが, NotIサイトができたのは比較的新しいことと考えられる.
- 1999-07-25
著者
-
門倉 利守
東京農業大学応用生物科学部醸造科学科
-
中里 厚実
東京農業大学応用生物科学部醸造科学科
-
大熊 盛也
理研・jcm
-
大熊 盛也
理化学研究所・生物基盤研究部微生物生態系機能解析室
-
工藤 俊章
長崎大・水産・海洋物質科学
-
工藤 俊章
理化学研究所
-
金子 太吉
東京農業大学応用生物科学部醸造科学科
-
竹田 正久
東京農業大学応用生物科学部醸造科学科
-
天野 誠
東京農業大学醸造学科
-
原山 格
東京農業大学醸造学科
-
工藤 俊章
理化学研究所微生物学研究室
-
門倉 利守
東農大・応生科・醸造
-
原山 格
東京農業大学醸造学科:(現)正田醤油(株)
-
天野 誠
東京農業大学醸造学科:(現)合同酒精(株)
-
竹田 正久
東京農業大学
-
門倉 利守
東農大・応生・醸造
-
中里 厚実
東京農業大学大学院農学研究科醸造学専攻
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