加熱時における油脂中のトコフェロールの分解および色調に対する水添率の異なるレシチンの効果
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概要
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水素添加率 (水添率) の異なる大豆レシチン (水添率25, 40, 60, 100%) を大豆油, 綿実油, オリーブ油および硬化度の異なるなたね油に0.1%ずつ添加し, 180℃, 加熱時の油脂の色調, トコフェロール (Toc) の熱分解度合, 加熱後の油脂の酸化安定性などについて検討した。<BR>1) 水添率の高い大豆レシチン添加油ほどかっ変度は高い。レシチンの水添率とその添加油のかっ変度との間には, 硬化なたね油, オリーブ油では明白な差があり, 大豆油, 綿実油ではその差は少なかった。<BR>2) 各油脂中のTocの熱分解はレシチンの添加でなり防止できた。そのToc熱分解防止作用は水添率の高いレシチンほど大きく, 未水添および水添率25%レシチン添加オリーブ油の場合, Tocの残存率が25%に対し, 水添率100%のレシチン添加ではTocの残存は50%であった。<BR>3) 加熱油のカルボニル価, アニシジン価は, 水添率の高いレシチン添加油ほど低く, 加熱後の油脂の酸化安定性 (オーブン試験) も高い。<BR>4) レシチン添加による油脂のかっ変度は, 硬化なたね油ほど高い。Tocの熱分解は硬化度の高いなたね油ほど大きいが, レシチンの添加によってTocの熱分解は防止できた。加熱後の油脂の酸化安定性は, レシチン未添加の場合, 硬化度の高いなたね油ほどわるい。しかし, レシチン添加の場合, 硬化なたね油の酸化安定性は著しく高められた。<BR>5) 溶液中でレシチンと金属 (塩化第二鉄, 塩化銅) が反応し複合体を形成した。複合体形成割合は, レシチンおよび100%水添レシチンと鉄とでは, 6.0および38.0%であった。<BR>6) 金属添加によって油脂の熱酸化およびTocの熱分解は促進された。油脂の色調は, 金属添加油と無添加油との間ではほとんど差がなく, わずかに金属添加油のほうがかっ変度が高い程度であった。金属とレシチンの混合系では, それぞれの単一添加系よりも油脂のかっ変度は高く, その色調は赤褐色を呈していた。また, その色調は, 水添率の高いレシチン添加油ほど赤褐色が濃い。<BR>油脂中のTocの熱分解は金属添加によって促進されたが (金属添加大豆油のTocの残存率31.3%), レシチン添加によってかなり防止され, 大豆油中のTocの残存率は77.7%であった。金属添加による油脂の熱酸化の促進, 加熱後の油脂の酸化安定性の低下は, レシチンの添加によりかなり防止できた。<BR>油脂中での金属とレシチンおよび水添レシチンとの複合体形成については推測程度で, 今後, 複合体形成の確認とそれが油脂のかっ変, Tocの熱分解防止に関与しているかをさらに検討したい。
- 社団法人 日本栄養・食糧学会の論文
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