加熱時における植物油脂中のトコフェロールの分解に対するリン脂質の効果
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概要
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油脂中のトコフェロール(Toc)および油脂の酸化安定性に及ぼすリン脂質の役割,ならびにレシチン添加油で調製した揚げ即度麺の酸化安定性などについて検討した. (1) オリーブ油中のTocは180°C, 10時間の加熱で完全に分解したが,レシチンの0.1%添加で63.5%のTocが残存し,さらにレシチンの添加量が増すに従いTocの残存率も高くなった.加熱後の油脂の酸化安定性はレシチン添加油のほうが未添加油より高い. (2) リン脂質の種類では,ホスファチジルコリン,ホスファチジルエタノールアミンはホスファチジルセリン,ホスファチジン酸などに比べてTocの熱分解防止性に富み, 180°C, 15時間の加熱でオリーブ油中のToc残存率は,ボスファチジルコリン,ボスファチジルエタノールアミン,ホスファチジルセリン,ホスファチジン酸でそれぞれ21.6, 20.3, 10.8, 10.8%であった. オレイン酸,塩化コリンの添加では油脂中のToc熱分解を防止することはできなかったが,リン酸の添加で防止できた.したがって,リン脂質では,主にリン酸基がToc熱分解を防止する成分と考えられる. (3) 加熱10時間目のリン脂質除去大豆油中のToc残存率は16.0%で,リン脂質未除去大豆油のToc残存率64.8%に比べて著しく低い.リン脂質除去大豆油にレシチンを添加することによってTocの残存率を高めることができた. 加熱油のアニシジン価はリン脂質除去率の高い大豆油ほど高く,加熱後の油脂の酸化安定性も低い. (4) リン脂質とTocの両成分を除去した大豆油は,リン脂質除去大豆油よりも酸化されやすい. 油脂中のリン脂質の役割の一つとして,油脂およびTocの熱分解を抑制する働き,ならびにTocに対する相乗剤としての役目を果たしている. (5) レシチン添加大豆油で調製した揚げ即席麺の酸化安定性は,未添加大豆油で調製した揚げ即席麺よりも高い.
著者
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