油脂の酸化生成物によるトコフェロールの分解と赤色物質について
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概要
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油脂の酸化生成物である酸化酸(石油エーテル不溶性の酸化脂肪酸)によるトコフェロール(Toc)の分解と赤色物質について検討した. 1. Tocと酸化酸との混合物を室温に保存した.保存経過に伴いTocが減少した.ことにα-Tocの減少が最も多く,次いで,γ-,δ-Tocの順であった. 2. Toc-酸化酸混合物は保存経過に伴い赤色度を増した.ことにγ-Tocが最も赤色度が高く,次いで,δ-Toc,α-Tocの順で, Tocの分解傾向とは一致しなかった. 3. Toc-酸化酸混合物から石油エーテルで赤色物を抽出し,次いで,赤色物をTLCにて単離した.本赤色物の極大吸収は460nm, HPLCによる相対保持時間(γ-Tocを1.00とする)は1.96で,これらは,硝酸をもってTocから調製したトコレッドのそれらの値と一致した.したがって,酸化酸によりTocからトコレッドが生成されることがわかった.トコレッドの生成度合はγ-Tocよりのものが最も多く,逆にα-Tocよりはほとんど生成しなかった. 4. NBT(ニトロブルーテトラゾリウム)溶液に酸化酸を添加した場合,保存経過に伴い,また,酸化酸の添加量が多くなるに従い560nmの吸光度は増加した.O2-を消去する酵素スーパーオキシドジスムターゼをNBT-酸化酸混合系に添加すると560nmの吸光度の増加率は減少した.したがって,酸化酸が溶存酸素分子を還元しO2-を発生させた.生成したO2-がTocの分解,トコレッドの生成に関与したものと考えられる.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
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