奥行補完の時空間特性

概要

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視覚系は網膜に投影される画像を局所的に観測する個々の視細胞の出力から外界の知覚を形成している.局所的な観測はあいまい性を生じるが, 画像中のあいまいさのない情報を利用し一定の拘束条件に従いながらあいまいな情報を補完することによって, このあいまい性を解決することができる.計算論的には, 局所的に表現された視覚情報が局所的な相互作用によって徐々に伝搬する過程としてこの補完を説明することができる.本論文では, 人間の視覚系において実際にこのような視覚情報の伝搬が起こっていることを示す実験結果を示した.あいまいな視覚情報として水平な線分の中央部の奥行を利用し, 端部の奥行を周期的に変化させたときに中央部の見えがどのように変化するかを調べた.その結果, 知覚される中央部の奥行と端点の奥行との間に小さなずれが存在することがわかった.また, そこで得られた位相差は, 水平線の長さ, 呈示位置, そして途中の遮へいの有無に依存して変化した.このような知覚の時間的ずれの存在は, 水平線分の奥行が端からの情報の伝搬によって決定され, その伝搬が局所的計測と局所的結合に基づく神経メカニズムによって計算されていることを示している.
社団法人電子情報通信学会の論文
2001-10-01

奥行補完の時空間特性

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