四倍性Solanum tuberosum L.とS. acauleニゲノム性半数体系統との体細胞雑種の特性
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概要
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バレイショの近縁野生種であるSolanum acauleの有用形質を栽培種に導入するためS.acauleの半数体系統(ATDH-1)と栽培品種デジマを用いて葉肉細胞由来のプロトプラストの電気的細胞融合を行い,体細胞雑種の獲得を試みた。プロトプラスト培養の結果,13カルス由来の18系統の再分化植物が得られた。染色体検定およびRAPD分析により,これら18系統のうち14系統が六倍体レベルの体細胞雑種であることが同定できた。さらに,これら体細胞雑種系統の細胞質ゲノム構成を調べるためにRFLP分析を行った。葉緑体ゲノムに関しては,各系統の葉緑体DNAを抽出し,それらのDNA制限酵素処理断片の電気泳動パターンを比較した。その結果,体細胞雑種14系統のうち8系統がATDH-1の,そして6系統がデジマの葉緑体ゲノムを持っていることが明らかとなった。ミトコンドリアゲノムの分析に関しては,ミトコンドリア遺伝子であるCOXIとCOBをプローブに用いたサザンハイブリダイゼーションパターンを比較した。その結果,1系統(DA18)のみがATDH-1由来のミトコンドリアゲノムを持ち,残りの13系統はデジマ由来のミトコンドリアゲノムを持っていると考えられた。体細胞雑種系統の外部形態を調査した結果,草型や塊茎の形はデジマに類似していた。しかし,ATDH-1と同様に茎部におけるアントシアニンの発現が認められた。また,複葉の色は両親の中間色を示した.塊茎の色に関してはATDH-1と同様の黄色を示した。ポテトXウイルスに対する抵抗性試験を行ったところ,PVXBに対して体細胞雑種系統はATDH-1と同程度の抵抗性を示した。このことより,体細胞雑種系統ではATDH-1由来のPVX^Bに対する抵抗性が発現しているものと考えられた。これらの体細胞雑種はATDH-1に特有の不良形質も持っていると思われるが,ポテトXウイルスに対する抵抗性を有していた。したがって,今後戻し交雑をすることによって,より良い育種母本を作出できる可能性があると考えられる。
- 日本育種学会の論文
- 1997-09-01
著者
-
三十尾 修司
神戸大学大学院農学研究科
-
石井 尊生
神戸大学大学院農学研究科
-
上島 脩志
神戸大学大学院農学研究科
-
石井 尊生
神戸大学農学部
-
山田 哲也
生物研
-
高岡 啓吾
石川島播磨重工業(株)汎用機械事業部第三営業部
-
上島 脩志
神戸大学農学部
-
伊藤 康博
食品総合研究所
-
山田 哲也
神戸大学自然科学
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三十尾 修司
神戸大学農学部
-
高岡 啓吾
石川島播磨重工業
-
三十尾 修司
神戸大学農学研究科
-
Takaoka Keigo
Ishikawajima-harima Heavy Industry
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