花粉粒の胚形成機構に関する研究 : 第8報タバコの花粉起源植物体の形成におけるNa2EDTAの役割

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タバコの葯培養における培地中の無機成分, とりわけNa2EDTAが花粉起源植物体の形成に与える効果について解析した. 培地中の無機塩類を1成分ずつ除去したところ, FeEDTAの除去により植物体形成が強く阻止された. これに対し, 他の無機塩類の除去は葯当たり形成植物体数が若干減少するものの, FeEDTAの存在下では他の無機塩類が皆無の場合でも45.6%の葯で植物体形成が認められた. 一方, 培養葯内花粉粒の顕微鏡観察から, FeEDTAの有無は培養初期の花粉粒の分裂には影響しないことが判った。また, 培養3週間目にFeEDTA除去培地に移植した葯では植物体が形成されなかった. これらの結果から, FeEDTAは胚様体が植物体に発育する段階で重要な役割を演じていると考えられる.FeEDTA貯蔵液の構成成分である硫酸鉄とNa2EDTAを分けて培地に添加したところ, Na2EDTAを除去した培地では植物体形成が阻止されたのに対し, Na2EDTAのみを加えた培地では完全培地と同様の形成率を示した. また, FeEDTAあるいはNa2EDTAの添加濃度の変更に対して, 植物体形成率は両者で同様の変化を示し, いずれも2×10-4M濃度で最高値が得られた. これらのことから, 少なくともタバコの葯培養におけるFeEDTAの効果は, Na2EDTA自身の機能によりもたらされているものと示唆される.
日本植物細胞分子生物学会の論文

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