花粉粒の胚形成機構に関する研究 : 第 3 報 異なる蔗糖濃度に対するタバコ葯培養花粉粒の分裂反応性及び胚状体形成過程(園芸農学)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
培養葯内花粉粒の核分裂に対する糖の効果を明らかにするために, 蔗糖を1/4M, 1/16M及び1/64M含む培地でタバコ(Nicotiana tabacum L. cv. Bright Yellow, 2n=48)の葯を培養し, 生殖核と栄養核の数によって類別された各型の花粉粒の出現頻度を調査した。さらにそれらの出現頻度に基づいて, 従来から異論のあった花粉粒起源胚状体の形成過程について若干の考察を試みた。多核化花粉粒, 多細胞化花粉粒及び胚状体のいずれの形成に対しても1/4M糖濃度培地が最も良好な結果を示した。加えて, この培地では他の濃度培地に比べて, 培養初期における花粉粒の枯死率が低下し, 栄養核の多核化及び多細胞化を示す花粉粒の出現頻度が高まる傾向がみられた。一方, 上記各型の分裂花粉粒の出現頻度に基づいて, 本文中のFig. 5に示すような花粉粒の胚状体形成過程を推定した。この過程は生殖核と栄養核をそれぞれ1個有する花粉粒から開始されるA経路と, 栄養核2個を有する花粉粒から開始されるB経路に分けられる。B経路では栄養核が多核化と多細胞化をくり返して胚状体の形成を導くが, A経路にはさらに次の3つの場合がある。すなわち, 栄養核の反復分裂によって多核化が5∿8核に達したときに生殖核の退化と細胞膜の形成がみられるA-1経路, 1個の生殖核を保ちながら栄養核がさらに多核化を続けて14∿17核前後ではっきりとした細胞膜を形成するA-2経路, 及び2個の生殖核を保ちながらA-2経路と同様の発育経過をたどるA-3経路に分けられる。これらの4経路は, いずれも胚状体形成の可能性をもつものと考えられるが, 生殖核を保ちながら栄養核の分裂を続ける花粉粒の出現頻度が高いこと等から, タバコの葯培養では花粉粒起源の胚状体の形成が主としてこの経路によって起こると考えるのが妥当であろう。
著者
-
三十尾 修司
神戸大学大学院農学研究科
-
三十尾 修司
神戸大学農学研究科
-
吉田 健一
明治大学農学部
-
吉田 健一
Department Of Life Sciences School Of Agriculture Meiji University
-
吉田 健一
明治大学農学部生命科学科
-
松林 元一
神戸大学農学部
-
吉田 健一
Maruwa Chemical Co. Ltd.
関連論文
- P-18 F_1由来倍加半数体系統を用いたイネ耐塩性の評価(日本作物学会第226回講演会)
- P-24 イネの光合成能力改良に向けたイネ科植物内における高k_Rubiscoの探索(日本作物学会第226回講演会)
- P-40 油料作物Jatropha curcasの組織培養による増殖と脂質定量(日本作物学会第226回講演会)
- P-39 丹波黒大豆'兵系黒3号'の成熟培養における,糖とアミノ酸の効果(日本作物学会第226回講演会)
- イネ葯培養における低温保存穂へのコルヒチン前処理の効果
- 四倍性Solanum tuberosum L.とS. acauleニゲノム性半数体系統との体細胞雑種の特性
- Random amplified polymorphic DNA (RAPD) 分析法のアズキとその近縁属への適用
- アズキとケツルアズキの細胞融合カルスからの植物体再分化
- トマトの胚軸組織切片の頂芽側における高頻度の二倍体再生
- 花粉粒の胚形成機構に関する研究 : 第7報 タバコ葯培養における花粉粒の分裂および幼植物体形成に対する培地内各種糖類の効果
- コムギの未熟胚培養におけるカゼイン加水分解物の添加効果
- イネ葯培養における培地へのアミノ酸およびカゼイン加水分解物の添加効果
- Solanum acaule の葯培養における花粉カルス形成に関わる要因
- イネ第1葉の細胞長と細胞数に及ぼす矮性遺伝子の影響
- 日本及び中国のコムギ品種における未熟胚培養
- コムギの未熟胚培養におけるカゼイン加水分解物の効果
- イネ葯培養における植物ホルモンおよびアミノ酸の効果
- RAPD分析により評価した在来アズキ系統の遺伝的多様性
- 農業形質から評価した在来アズキ系統の遺伝的多様性
- チェコで開催された国際植物組織細胞培養シンポジウムに出席して
- 花粉粒の胚形成機構に関する研究.第6報 : Nicotiana rustica及びその祖先種 N. paniculata, N. undulata における葯培養
- 成長点培養によるバレイショのウイルス無毒化に関する研究第1報 : 成長点組織の幼植物分化に影響する若干の要因と分化植物のウイルス無毒化
- 花粉粒の胚形成機構に関する研究 第5報 : タバコおよびその祖先種の葯培養におけるゲノム構成,倍数性レベルならびに細胞質の影響
- 花粉粒の胚形成機構に関する研究 : 第 4 報 in vivo 及び in vitro のタバコ葯における組織化学的比較(園芸農学)
- アイソザイム分析によるバレイショ近縁種の系統進化に関する研究.第2報 : メキシコ及び南米産2倍種間における類縁関係
- 兵庫県の稲作と米 : 伝統と新たな展開
- バレイショ近縁種における種の分化 : ・メキシコ産2倍程8.0鮒2κ05舳に対する南米産2倍種数種のゲノム類縁関係
- 花粉粒の胚形成機構に関する研究 : 第 3 報 異なる蔗糖濃度に対するタバコ葯培養花粉粒の分裂反応性及び胚状体形成過程(園芸農学)
- 花粉粒の胚形成機構に関する研究 (第2報) : タバコ葯培養における幼植物形成に対する各種糖類濃度の効果(園芸農学)
- バレイショ近縁種における種の分化 : IX.メキツコ産2倍性近縁種相互間のゲノム類縁関係
- 花粉粒の胚形成機構に関する研究 (第1報) : タバコの培養葯内花粉粒の分裂に対する培地諸成分の個別的効果(園芸農学)
- 動物ゲノム情報を利用した遺伝子機能の解明
- Murine Mll2 Gene and Its Expression
- コムギの未熟胚培養における植物生長調整物質の効果
- 花粉粒の胚形成機構に関する研究 : 第8報 タバコの花粉起源植物体の形成におけるNa2EDTAの役割
- イネにおける葉緑体型ホスホグリセリン酸ムターゼOsPGMd2の機能解析
- イネ葯培養における低温保存穂のコルヒチン前処理による倍加個体の効率的誘起
- 花粉粒の胚形成機構に関する研究-4-in vivo及びin vitroのタバコ葯における組織化学的比較
- 各種糖濃度に対する培養葯内花粉粒の分裂反応(園芸農学)
- 甘藷とその原種の特性比較,とくに根部肥大成長の組織学的差異
- 新規なCCTドメインタンパク質OsCCT1は高CO_2環境への代謝的・形態的応答に関係している
- バレイショ近縁種における種の分化 XIII. S.acaule X S.demissumより得た7倍雑種の染色体行動と両親ゲノムの類縁関係
- バレイショ近縁種における種の分化.XII : Commersoniana群2倍種とTuberosa群2倍種の群内及び群間のゲノム類縁関係
- バレイショ近縁種における種の分化.XI : S. acauleとCommersoniana群2倍種とのゲノム類縁関係(園芸農学)
- Solanum tuberosum とその近縁 2 倍種間の交雑能力に対する染色体倍加及び免疫抑制物質の効果(園芸農学)
- Solanum tuberosumとその近縁2倍種間の交雑能力に対する染色体倍加及び免疫抑制物質の効果〔英文〕
- バレイショの 2 倍性半数体における遺伝的変異, 特に若干形質にみられる対立変異について(予報)(園芸農学)
- Crepis capillarisの葉片培養組織における染色体変異 (第1報) : カルスにおける染色体の数的変異とそれに対する生長物質の影響(園芸農学)
- バレイショ近縁種における葯培養 : I. カルスの形成と根の分化(園芸農学)
- 大学1年生が実験レポートを作成する際に参考にする資料について
- ヒトDNA複製因子による転写制御
- イネにおけるプラスチド局在型エノラーゼ遺伝子の機能解析
- 幼苗期におけるインディカイネの交雑親と倍加半数体系統群の耐塩性比較
- 高CO_2条件で発現促進される受容体型キナーゼOsTPK1の機能解析
- オオムギ Rubisco activase の高発現がイネの光合成特性と葉内成分含量におよぼす効果