バレイショ近縁種における葯培養 : I. カルスの形成と根の分化(園芸農学)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
花粉起源の半数体を育成するために, バレイショの2倍性近縁種(2n=24), S. berthaultii, S. chacoense S. jamesiiびS. phureja(2栄養系)を用いて葯培養を行ない, 葯からのカルス形成とカルスからの根の分化に対する置床葯の発育期, 基本培地の組成ならびに生長物質添加量の影響を供試材料別に比較検討した。培地はNITSCH(1951), MURASHIGE&SKOOG(1962), LINSMAIER &SKOOG(1965), BLAYDES(1966)およびNITSCH&NITSCH (1969)の処方を基本とし, これにIAA, NAA, 2,4-Dおよびkinetinを0.1,1.0,5.0および10.0mg/lの濃度で単独または混合添加した。供試材料や培養条件のいかんをとわず, 葯内容からの直接の胚状体形成はみられず, いずれの場合も培養による初期変化としては, 葯内部からのカルス形成(A), 花糸切断面でのカルス形成(B), ならびに葯壁のカルス化(C)のみであった。これらのうち, 花粉起源が期待されるAカルスは, 置床5∿6週後, つぎの条件が整ったとき, 置床葯数の約3%の頻度をもってその誘導が認められた。すなわち, 供試材料別ではS. phurejaを, また葯の発育期別では1核初期の葯を用いた場合, さらに培地組成別では無機塩類濃度の比較的低いNITSCH&NITSCHの基本培地にIAA1.0mg/lとkinetin 1.0,5.0および10.0mg/lを混合添加した場合がこれである。Bカルスは, IAA 10.0mg/l区を除いては, kinetinの量とは関係なく, 置床葯数の1.3∿16.0%の頻度をもってその形成がみられた。Cカルスの形成もほぼこれと類似の傾向を示した。いずれの場合もNAAと2,4-Dの添加区からは, それらの単用もしくはkinetinとの併用をとわず, IAAとkinetinとの併用にまさったカルス形成率はえられていない。一方, カルスからの根の分化は, kinetin 1.0mg/lに等量のIAAを併用したNITSCH&NITSCHの培地にカルスを移植したとき, その4∿6週後に, A・B両カルスで, またIAAの量比をあげて5.0mg/lとした場合にもBカルスでそれぞれ認められた。発根には2様式がみられ, Aカルスは太く逞しい根系を, Bカルスはその表面から根毛様の細根を分化した。しかしこれらの根はその後まもなく褐変枯死したので, それらの起源を確認するにいたっていない。茎葉の分化はいずれの場合にも認めることができなかった。
- 神戸大学の論文
著者
関連論文
- 成長点培養によるバレイショのウイルス無毒化に関する研究第1報 : 成長点組織の幼植物分化に影響する若干の要因と分化植物のウイルス無毒化
- 花粉粒の胚形成機構に関する研究 第5報 : タバコおよびその祖先種の葯培養におけるゲノム構成,倍数性レベルならびに細胞質の影響
- 花粉粒の胚形成機構に関する研究 : 第 4 報 in vivo 及び in vitro のタバコ葯における組織化学的比較(園芸農学)
- アイソザイム分析によるバレイショ近縁種の系統進化に関する研究.第2報 : メキシコ及び南米産2倍種間における類縁関係
- バレイショ近縁種における種の分化 : ・メキシコ産2倍程8.0鮒2κ05舳に対する南米産2倍種数種のゲノム類縁関係
- 花粉粒の胚形成機構に関する研究 : 第 3 報 異なる蔗糖濃度に対するタバコ葯培養花粉粒の分裂反応性及び胚状体形成過程(園芸農学)
- 花粉粒の胚形成機構に関する研究 (第2報) : タバコ葯培養における幼植物形成に対する各種糖類濃度の効果(園芸農学)
- バレイショ近縁種における種の分化 : IX.メキツコ産2倍性近縁種相互間のゲノム類縁関係
- 花粉粒の胚形成機構に関する研究 (第1報) : タバコの培養葯内花粉粒の分裂に対する培地諸成分の個別的効果(園芸農学)
- 花粉粒の胚形成機構に関する研究-4-in vivo及びin vitroのタバコ葯における組織化学的比較
- 各種糖濃度に対する培養葯内花粉粒の分裂反応(園芸農学)
- 甘藷とその原種の特性比較,とくに根部肥大成長の組織学的差異
- バレイショ近縁種における種の分化 XIII. S.acaule X S.demissumより得た7倍雑種の染色体行動と両親ゲノムの類縁関係
- バレイショ近縁種における種の分化.XII : Commersoniana群2倍種とTuberosa群2倍種の群内及び群間のゲノム類縁関係
- バレイショ近縁種における種の分化.XI : S. acauleとCommersoniana群2倍種とのゲノム類縁関係(園芸農学)
- Solanum tuberosum とその近縁 2 倍種間の交雑能力に対する染色体倍加及び免疫抑制物質の効果(園芸農学)
- Solanum tuberosumとその近縁2倍種間の交雑能力に対する染色体倍加及び免疫抑制物質の効果〔英文〕
- バレイショの 2 倍性半数体における遺伝的変異, 特に若干形質にみられる対立変異について(予報)(園芸農学)
- Crepis capillarisの葉片培養組織における染色体変異 (第1報) : カルスにおける染色体の数的変異とそれに対する生長物質の影響(園芸農学)
- バレイショ近縁種における葯培養 : I. カルスの形成と根の分化(園芸農学)