アイソザイム分析によるバレイショ近縁種の系統進化に関する研究.第2報 : メキシコ及び南米産2倍種間における類縁関係
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概要
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南米産のCommersoniana (COM), Circaeifolia (CIR), Conicibaccata (CON), Cuneoalata (CUN), Megistacroloba (MEG)及びTuberosa (TUB) 6分類群の2倍種とメキシコ産のMorelliformia (MOR), Bulbocastana (BUL), Pinnatisecta (PIN)及びPolyadenia (POL) 4分類群の2倍種を用い, それら相互間における類縁関係を明らかにするため, 塊茎中のパーオキシダーゼアイソザイムをディスク電気泳動法により分析した。種間の比較は, バンドの濃淡と出現頻度及びこれに基づく主成分分析により行い次の結果を得た。1) 供試全2倍種には8本のweak band, 12本のmedium band及び2本のstrong bandが認められ, 平均75.7%以上の出現頻度を示すstrong bandのBand 11,medium bandのBand 3,15,16,17及び18を基本バンドとみなした。2) Band 9,10及び19の出現頻度は, それぞれ, 南米産2倍種では平均69.5%, 53.9%及び54.4%, メキシコ産2倍種では平均42.2%, 7.5%及び39.5%であった。したがって, 両者は主成分分析による散布図(Fig. 3)では第1及び第3主成分軸に沿って類別できるが, 極めて接近した分布を示す。3) 南米産2倍種では, CON群がBand 8の濃度が大で比較的高い出現頻度を示すことから他と区別できたが, その他の分類群間には明らかな差異は見出せなかった。4) メキシコ産2倍種では, BUL及びPOL群の2倍種に大きな種間差異がみられ, 分類群の識別が困難であった。またBUL, POL及びMOR 3群はBand 12が平均84.8%出現するのに比べ, PIN群は31.7%でかなり低く, 両者間に差異がみられた。MOR群は他の2倍種とかなり異なり, 基本バンドのうちBand 16,17及び18は全く示さない上に, Band 11も11.1%の低頻度で出現し, したがって, そのパターンは著しく単純であった。5) 以上の結果から, 供試2倍種相互間における類縁関係は次のように考えられる。i)南米産2倍種は, 他分類群から若干の遺伝的分化を示すCON群を除き, 相互に極めて高い類縁関係にあり, したがってこれらはAゲノム群に属するとみなされる。ii)メキシコ産2倍種には, 南米産2倍種相互間におけるよりもやや進んだ段階の遺伝的分化が認められるが, 両者はいずれもかなり類似した遺伝的構成を有する。
- 1983-01-30
著者
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保坂 和良
神戸大学農学部附属農場
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保坂 和良
神戸大学農学部附属食資源教育研究センター
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松林 元一
神戸大学大学院自然科学研究科資源生物科学
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保坂 和良
神戸大学自然科学研究科
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松林 元一
神戸大学農学部
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