バレイショ近縁種における種の分化.XII : Commersoniana群2倍種とTuberosa群2倍種の群内及び群間のゲノム類縁関係
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概要
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Commersoniana (COM)群野生2倍種4種, Tuberosa (TUB)群野生2倍種2種, 同群栽培2倍種3種及びS. tuberosumの2倍性半数体(tbr-2x)(以上いずれも2n=24)を用い, 相互間におけるゲノムの類縁関係を明らかにするために, 2倍種間の交雑能力を調べ, さらに2倍雑種, 複2倍体及びそれらの両親同質4倍体の細胞遺伝学的行動を観察した。得られた結果を次に要約する。1) COM群2倍種は, S. commersonii (cmm)を除いて, 相互に高い交雑能力を示した。2倍雑種は, cmm関与のもの以外, いずれも第1中期で観察細胞数の96%以上が規則的な染色体対合12_Iを示し, 第1後期と第2中期の染色体行動にも特記すべき異常はみられず, 花粉も90%以上が正常であった。cmm関与の雑種には, 移動期に4連染色体の形成, 第1後期に遅滞染色体や染色体橋等の異常が現われ, 花粉稔性も70%前後であった。複2倍体の多価頻度は, 両親同質4倍体のそれに比べ, 有意的に低い値を示したcmm関与のものを除き, すべて高い値を示した。2) TUB群2倍種も相互間の交雑は容易であったが, 交雑能力はCOM群のそれより低かった。2倍雑種では, いずれも90%前後の細胞が12_Iを示し, 以後の染色体行動は一般に正常であった。花粉はtbr-2x関与の雑種(27.6%)以外いずれも70∿80%が正常であった。複2倍体は両親同質4倍体よりもむしろ高い頻度で多価形成を示した。3) 前記両群2倍種の群間交雑は容易であったが, 交雑能力は群内の場合に比してやや低かった。2倍雑種の第1中期では80%前後の細胞が12_Iを示した。しかし, 異形対合の出現に加え, 第1後期以後には遅滞染色体, 染色体橋, 分散染色体等の異常が群内雑種よりやや高頻度でみられた。稔性は良好でTUB群内雑種と大差なかった。複2倍体は, 群内複2倍体と異なって, 両親同質4倍体に比べ多価頻度の有意的な低下を示した。4) 以上の結果から次の見解が導かれた。i)COM群2倍種はいずれも相同ゲノムを共有するが, cmmのゲノムには若干の構造的分化がみられる。ii)TUB群2倍種のゲノムも互いに相同である。iii)両群2倍種のゲノム間には, 複2倍体における選択対合によって検出できる程度の構造的差異が存在するが, それはゲノムのカテゴリーを異にするほど大きいものではない。したがって, 両群2倍種のゲノム型は, 従来の提案どおりAAと記号づけるのが妥当と考えられる。
- 神戸大学の論文
- 1983-01-30
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