バレイショ近縁種における種の分化.XI : S. acauleとCommersoniana群2倍種とのゲノム類縁関係(園芸農学)
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概要
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Acaulia群所属の野生4倍種S. acaule (acl, 2n=48)とCommersoniana(COM)群所属の野生2倍種(2n=24), S. saltense (slt)及びS. schickii (sch), とのゲノムの類縁関係を明らかにするために, 両群間3倍雑種(2n=36)及びsltを父本とした雑種から育成された複2倍体(2n=72)の細胞遺伝学的行動を常法によって追究し, 次の結果を得た。1) 両群間の交雑はaclを母本としたときのみ成功した。その交雑能力は比較的高く, 受粉花当りの発芽可能種子数で示して86.4∿98.2であった。2) slt関与の3倍雑種は(5.36)_<III>+(7.74)_<II>+(4.44)_I(50細胞), sch関与のそれは(5.59)_<III>+(7.11)_<II>+(5.00)_I(64細胞)のM-I平均対合頻度を示し, いずれもそのモードは6_<III>+6_<II>+6_Iであった。ここにみられる3価頻度は, 母本として関与しているaclを完全な異質4倍性とみなした場合には余りにも高く, 反面Solanumの同質3倍体のそれに比べると有意に低い値である。また両雑種とも, ゲノム内対合によって, 半数余の細胞が基本数12を超えた細胞当り対合数(3価+2価)を示した。A-I及びM-IIでは半数前後の細胞に不規則な染色体行動がみられ, その結果, 花粉稔性は2.7∿4.8%, 種子稔性は父本による戻交雑で0.07∿0.12の低率であった。3) acl×sltの複2倍体のM-I平均対合頻度は(0.13)_<VI>+(0.02)_V+(5.93)_<IV>+(1.07)_<III>+(21.29)_<II>+(1.58)_I(45細胞)で, 特に細胞当り3∿9にわたる高頻度の4価形成が注目された。A-I以後の染色体行動は比較的正常で, 74.3%の花粉稔性と同系交雑で13.25の種子稔性を示した。4) 以上の結果から, 両群間のゲノム類縁関係とaclのゲノム構成について次のような推論が導かれた。i) COM群2倍種のゲノムはaclがもつ2組(単相)のゲノムの一つと相同である。これは, 当3倍雑種にみられる対合の主体が両親ゲノム間の異親対合で起こり, 3価形成はaclの2組のゲノム間の部分相同によるとの見解に基づく。ii) aclは, 上記の見解に基づき, 部分異質4倍性と考えられる。すでにCOM群2倍種はAAゲノムをもつことが認められているので, aclのゲノム型はAAA^aA^aとするのが妥当である。
- 神戸大学の論文
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