花粉粒の胚形成機構に関する研究 (第1報) : タバコの培養葯内花粉粒の分裂に対する培地諸成分の個別的効果(園芸農学)
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概要
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1) 葯培養における花粉起源半数体誘導に対する培地成分の個別的効果を明らかにするために, 糖, 無機塩類およびIAA (1.5ppm)を単独, あるいは組合せて添加した培地でタバコ(Nicotiana tabacum L. cv. Bright Yellow, 2n=48)の葯を培養し, 花粉粒の核分裂と胚状体および植物体の形成に対する各成分の誘起効果を検討した。2) 多核化花粉粒の形成に対して最も有効な培地成分は糖であった。すなわち, 培養20日目の多核化花粉率は糖と無機塩類の両者を含む培地で6.8‰と最も高く, 全体に含糖区の方が無糖区よりも高かった。さらに, 含糖区の葯は培養初期(約10日)黄緑色に保たれ, 約20日で裂開したのに対し, 無糖区の葯では短期間(約5日)に暗緑色から暗褐色となり, 裂開しなかった。3) 糖だけでは培養期間を経るに従って多核化花粉率が低下し, 植物体の形成はみられなかった。多核化花粉粒の生存を維持し, 胚状体から植物体へと発育させるのには, 糖の他に無機塩類が必要だった。しかし, 無機塩類は単独に培地に加えても多核化花粉粒の誘起に対して何ら効果を示さなかった。4) 1.5ppmのIAAは, 多核化花粉粒の形成ならびに植物体の形成に対して, むしろ阻害的に働く傾向を示した。5) 寒天だけの培地でも低頻度(1.4‰)ながら多核化花粉粒の形成がみられたことから, 花粉粒の核分裂を胚状体形成へ転換させる主因は, 培地成分よりも, むしろ葯がin vitroの条件に置かれることによっておこる葯内の何らかの変化によるのではないかと推察される。そして培地成分中の糖は, 葯内で花粉粒が初期の分裂を行なうために必要な葯の初期活性維持に対して, また無機塩類は, 多核化花粉粒のその後の発育と緑色胚の形成に対して, それぞれ何らかの役割を果たしているのではないかと考えられる。
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