各種糖濃度に対する培養葯内花粉粒の分裂反応(園芸農学)
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概要
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葯培養による花粉起源胚状体の形成は, 培養時における物理的, 化学的ならびに生物的諸要因の相互作用にその成否がかかっているものと考えられる。本研究では, これら諸要因のうち, まず化学的な外生要因の一つとしての糖の効果を検討するために, 数種の植物につき, 2,5,10および15%の糖濃度をもつ培地で葯培養を行ない, 培養10日目と20日目に花粉粒の分裂行動を調べた。各糖濃度に対する花粉粒の反応には, 種による著しい差異がみられた。すなわち, 分裂花粉粒が高頻度に認められたときの糖濃度に基づいて供試植物を類別すると, 1)低濃度(2∿5%)でよく反応するもの(Nicotiana tabacum), 逆に2)高濃度(10∿15%)でよく反応するもの(Brassica oleracea, Hordeum distichum, Oryza sativa, Solanum verrucosum), 3)いずれの濃度でも反応するもの(Lycopersicon esculentum)および4)いずれの濃度でも全く反応を起さないもの(Glycine max, Petunia hybrida, Zea mays)の4型となる。同じく反応を示しても, その程度は植物によって大きく異なる。それぞれ最も有効な糖濃度における培養20日目の調査によると, HordeumやNicotianaでは, それぞれ置床葯の50.9%と73.7%が分裂粒を示したのに対し, Brassica, Lycopersicon, OryzaおよびSolanumではそれぞれ8.0,16.7,3.9および11.4%の葯がそれを示したにすぎない。これと似た傾向は葯当り分裂花粉粒の頻度や花粉粒当り分裂核数についてもみられた。高濃度の糖によく反応する植物でも, 培養日数の経過に伴う分裂花粉粒の頻度の増大はさして認められなかった。これは高濃度の糖が花粉粒の分裂誘起には有効であっても, その後の多核化もしくは多細胞化にはほとんど効果を現わさないためと考えられる。一方, 培養葯内花粉粒の分裂行動も著しく多様で, これを整理すると凡そつぎのように類型化できる。まず培養に対して花粉粒が全く反応を示さない場合とそれを多かれ少なかれ示す場合に大別される。後者には, さらに, 分裂花粉粒が数10核で発育を停止したり, あるいは澱粉を蓄積して肥大する場合と, 生殖核か栄養核のいずれかが分裂を重ねて多核化し, 数核から10数核のとき膜を形成して多細胞化するか, あるいは最初から膜の形成を伴って生殖核と栄養核の別なく分裂をくりかえして多細胞粒になる場合とがある。花粉植物誘導の最も大きい可能性をひめているのは, 分裂様式や出現頻度からみて, 最後にあげた場合のようである。これらの分裂様式はいずれの糖濃度区においても認められたので, それに対する糖濃度の影響はないものと考えられる。
- 神戸大学の論文
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