<原著>新疆ウイグル自治区のウイグル族およびカザフ族の形態および最大酸素摂取量

概要

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新疆ウイグル自治区のウイグル族およびカザフ族の形態および最大酸素摂取量について検討した。被験者は, 同自治区の区都ウルムチとウルムチから700km離れた小都市イリ地区の専科学校に通学する18〜24歳の男子で, ウルムチ地区のウイグル族317名およびカザフ族61名, イリ地区のウイグル族25名およびカザフ族215名であった。これらの4グループの形態および最大酸素摂取量を, 福岡や東京, 北京の大学生と比較しながら検討を加えた。身長は, ウイグル族に比ベカザフ族が高く, 遊牧民の子孫であるカザフ族が農耕民のウイグル族より遺伝的に大きいのか, あるいは動物性蛋白質の摂取を主とした栄養条件が良好であるであるかのどちらかであろうと考えられた。しかしカザフ族といえども日本や北京の大学生よりは, 身長は低かった。これはカザフ族やウイグル族が低身長であるのではなく, 新疆ウイグル自治区の社会経済的状態が日本や北京はど変化していないためであろうと考えられる。体重や胸囲などの幅育に関しても, 身長と同様な結果であった。しかし比胸囲や除脂肪体重などで比較すると, ウイグル族・カザフ族のいずれも日本や北京の大学生に劣ってはおらず, 身体の充実度はむしろ優れているとさえ考えられた。また皮下脂肪厚やそれから求められる体脂肪率は, 日本や北京の大学生よりはるかに少なく, 肥満者はウルムチ地区に住むウイグル族に4名(1.3%)しか認められなかった。最大酸素摂取量についても, イリ地区の方がウルムチ地区より高く, ウルムチ地区のウイグル族はやや低くかった。体脂肪率や最大酸素摂取量の結果から, 日本や中国の大都市北京ほどではなくても, ウルムチ地区は交通手段の発達やそれらの利用などによって, 日常生活での身体活動の減少が起こり始めているのではないかと考えられた。本研究は, 昭和62年度文部省科学研究費補助金(海外学術研究)「中国新疆ウイグル自治区の少数民族とその文化の特質に関する基礎的研究」(代表者 : 権藤与志夫)の一環として行われた。本論文の要旨は, 第44回目本人類学会・日本民族学会連合大会(川崎市)において口頭発表した。
九州大学の論文
1991-02-08

<原著>新疆ウイグル自治区のウイグル族およびカザフ族の形態および最大酸素摂取量

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