<原著>ネパール王国の都市近郊に居住するチベット移住民の医学調査

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ネパール王国力トマンズ市南部に位置するJawalakhel地区のチベット系移住民548名(20〜85才 : 男性242名, 女性306名)を対象に医学面からの調査を行って次の結果を得た。1)血圧は男性125±21/78±16mmHg, 女性は118±19/72±13mmHgであり, 男女いずれも加齢と共に上昇または上昇傾向を示した。40歳・50歳代で比較した高血圧の頻度は日本人のそれより低かった。2)塩茶を常飲していたが, 食塩摂取量はこれまで調査した丘陵農村や都市近郊農相住民, あるいは日本人とほば同じかやや多い12〜13g/日程度であった。一方, カリウム摂取量はやや低値を示した。3)心電図検査で虚血性変化を示したものが5〜6%に見られた。その頻度は丘陵農村や都市近郊農村住民に比べて3〜4倍高かった。4)末梢血液検査では好中球増多と好酸球増多が特徴的であった。この所見はネパールの他の地域でも見られており, 衛生環境の劣悪さが示唆された。5)血清総コレステロールは丘陵農村, 都市近郊農村住民に比して明らかに高く, 日本人のそれに近似していた。6)血圧には栄養状態, 電解質などが関わっており, 食塩摂取量との関わりは大きくなかった。以上のように, ネパールの都市部に住むチベット移住民の医学調査成績は同一方法を用いて既に調査を行ったネパールの2つの農村住民に比して異なっており, また高血圧の頻度は明らかに高値を示した。今後, これら医学調査成績に, 栄養, 形態・体力調査成績を加えて, 総合的にまとめて検討を行う予定である。
九州大学の論文
1993-02-15

<原著>ネパール王国の都市近郊に居住するチベット移住民の医学調査

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