<原著>ネパール王国丘陵農村ならびに都市近郊農村住民の形態および最大酸素摂取量

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生活環境や生活様式などの都市化・近代化の進行が, 形態や最大酸素摂取量にどのような影響をおよぼしているかを明らかにする目的で, ネパール王国の代表的な生活様式を示す農村の実態を調査した。調査対象者は, ネパール王国の丘陵地帯にあるK村(男性20〜75歳, 126名および女性20〜75歳, 144名)および都市近郊のB村(男性20〜85歳, 124名および女性20〜80歳, 126名)に居住する住民である。そしてすでに報告されているネパール人や日本人を対象にした資料と比較検討を試みた。結果は以下のように要約できる。1)両村の各年代の身長・体重の平均値は, 女性の20歳代の体重にのみ有意な差が認められ, K村が大きかった以外は大差ないものであった。また, 男性ではネパ-ル人を対象にした従来の報告値とも大差なかった。しかし, 日本人の値と比べると, 男女とも身長は若い年代で有意に低かったが, 高年齢層には顕著な差はみられなかった。体重には男女ともいずれの年代にも有意な差が認められ, 本対象者の方が低値であった.2)皮下脂肪厚および%Fatは, B村がK村よりやや大きい傾向にあったが, 20歳代男性の上腕背側部および肩甲骨下角部の皮下脂肪厚と%Fatに有意差が認められただけであった(P<0.01)。また, 男性では従来のネパール人の値よりやや小さいか同水準であった。日本人の値に比べ両村の値は, 全ての年代の男女とも有意に小さかった。3)肥満者は, K村では男女とも認められなかった。B村では男女それぞれ3名であった。肥満者の各年代の出現率は, 日本人の出現率に比べ極めて低値であった。また, 本対象者のエネルギー総摂取量は, 日本人の値に比べ有意に大きい.これらのことから, 本村象者と日本人の皮下脂肪厚, %Fatおよび肥満者の出現率の差は, 身体活動量の違いによるものと考えられた。4)両村の各年代の最大酸素摂取量の平均値は, 若い年代にB村よりK村の方が大きい傾向にあり, 男性の20歳代(P<0.001)および男性の30歳代(P<0.01)に有意な差が認められた。そしてこの差は, 農閑期であり農作業以外の身体活動, 特に歩行量の違いによるものとも考えられた。一方, 女性にはどの年代にも有意差はなかった。5)最大酸素摂取量の平均値は, 男性では加齢とともに減少する傾向がみられたが, 女性では男性ほど顕著ではなかった。両村住民の年齢(X)と最大酸素摂取量(Y)との間には, K村では男性Y=-0.462X+61.2(r=-0.682), 女性Y=0.234X+43.7(r=-0.410), B村ではY=-0.261X+48.2(r=-0.557), 女性Y=-0.222X+41.9(r=-0.342)の一次回帰式が得られた。6)男性の場合, K村の最大酸素摂取量の平均値は,従来の発展途上国住民の報告値とほぼ同水準であり, 日本の地域住民や他の工業先進国住民の値より若い年代では明らかに高いが, 高年齢層では同水準であった。B村の平均値は, 発展途上国住民より低値であり, 日本の地域住民や他の工業先進国住民の値と大差ない。そしてB村の若年齢層には, わが国などの工業先進国にみられる低体力化が伺えた。女性の場合両村の各年代の最大酸素摂取量の平均値は, 発展途上国の住民よりやや低いかほぼ同水準であり, 日本やドイツなどの工業先進国の住民より高い。加齢による最大酸素摂取量の低下も少ない。したがって, 本対象者の場合は, 両村とも身体活動量が不足し, 低体力化していると判断する材料は見あたらなかった。
1992-02-08

<原著>ネパール王国丘陵農村ならびに都市近郊農村住民の形態および最大酸素摂取量

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