<原著>分速100mの60分間歩行時における呼吸循環系機能と血中生化学成分の動態

概要

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本研究は, 20〜22歳までの女子大学生8名を対象に分速100mの60分間歩行時における脂質代謝を, 呼吸循環系機能と血中生化学成分やホルモン動態の面から検討した。結果は, 次のように要約できる。1. 被験者8名は, 60分間歩行時の平均相対強度が58.0%Vo_2maxの高群5名と45.7%Vo_2maxの低群3名の2群に分類できた。 2. 高群と低群の身体特性に差はみられず, 低群のVo_2max (40.03ml/kg/min)が高群のそれ(32.73ml/kg/min)より有意に高い値を示した。3. 60分間の平均心拍数は低群で122.5拍/分,高群で136.1拍/分であった。4. 高群と低群の60分間の酸素摂取量(ml/kg/min)や呼吸交換比(RQ)の平均値間に有意な差はみられず, エネルギー消費量も高群で300.2kcal/hr, 低群で288.3kcal/hrで有意差はみられなかった。5. 心拍数の経時変化は高群に顕著で, 60分間の上昇率は15.3%, 低群の上昇率は5.4%であった。6. 呼吸交換比のピーク値は高群(0.82)で10分後に低群(0.83)で20分後に出現したが.その後は2群とも直線的に低下して60分後は高群で0.80,低群では0.81であった。7. 歩行中の血中乳酸濃度のピーク値は2群とも15分後に出現したが, その後は高群でも安静値水準の濃度で推移した。8. 総コレステロール, Na, Clには2群ともほとんど変化が認められず, CPKと中性脂肪は経時的に上昇する傾向にあった。高群のLDHとGOTはほぼ安静値水準で60分間推移した。9. 歩行中の血糖値は2群とも安静値水準かやや低い値で推移し, インスリン濃度は60分間で顕著に低下した。10. 遊離脂肪酸の動態では, 歩行開始15分後までの濃度には2群間に差がなくほぼ安静値水準に等しい。しかし, 30分以後は明らかに高群の変化率が大きく, 30分値と45分値は安静値の約1.6倍, 60分値は約1.9倍の高濃度に達した。低群でも遊離脂肪酸濃度は経時的に上昇したが60分値で安静値の約1.3倍の濃度にすぎなかった。11. 歩行中のアドレナリン濃度の変化は高群に顕著で, 歩行開始と同時に直線的に上昇し, 30分後には安静値の2.8倍, 45分後には3.5倍, 60分後には4.8の高濃度に達した。低群の濃度は60分後でも安静値の2.3倍にとどまった。12.ノルアドレナリンの動態には2群ともそれほど大きな変化はなく, 安静値の約1.5倍程度の上昇率であった。13. 歩行中のアドレナリンと遊離脂肪酸の変化率間には5%水準の有意な相関がみられた。14. 歩行開始30分後と45分後の%Vo_2maxと遊離脂肪酸の変化率との間には有意な相関はみられず, 60分後では5%水準の有意な相関がみられた。本研究は, 昭和61年度特定研究「健康処方の適用と効果に関する総合的研究」の一部である。
1988-02-20

<原著>分速100mの60分間歩行時における呼吸循環系機能と血中生化学成分の動態

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