停止エスカレータと視覚運動により生ずる姿勢変化と違和感
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概要
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通常,動いているエスカレータは非常に慣れ親しんだ環境であるが,停止したエスカレータに乗り込もうとすると,しばしば階段の上り下りでは生じない身体的違和感を覚える.このような停止エスカレータにおける身体的違和感の発生には,乗り込み時の上体前傾などの無意識的に生じる姿勢変化の関与が示されてきた.そこで本研究では従来の仮説を一歩踏み込み,被験者の意図や環境条件とは無関係に姿勢変化を引き起こすことによって身体的違和感が生ずるかどうかを探った.エスカレータ模型を上る状況に慣れ,身体的違和感が十分減弱した被験者に対し,エスカレータ模型を上る最中に視覚運動を提示して反射的な姿勢変化を引き起こすと,再び身体的違和感の発生が見られた.また,視覚運動により引き起こされた姿勢変化が,実験初期に停止エスカレータに乗り込む際に生じた姿勢前傾と類似する場合には,それらの状況で生じた身体的違和感が似たものとして知覚される傾向にあることが認められた.これらの結果から,身体的違和感の発生の原因となる潜在的運動応答を引き起こす要因は「内発的」である必要はなく,被験者の意識的制御とは独立した応答であればよいことが明らかになった.また,被験者が知覚する身体的違和感は,運動中に生じる姿勢変化の大きさと方向によって規定されたベクトル情報を持つ感覚であることが示唆された.
- 2011-02-28
著者
-
五味 裕章
Nttコミュニケーション科学基礎研究所:jst-erato下條潜在脳機能プロジェクト
-
五味 裕章
日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所
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福井 隆雄
NTTコミュニケーション科学基礎研究所
-
櫻田 武
NTTコミュニケーション科学基礎研究所
-
福井 隆雄
関西学院大学大学院文学研究科
-
五味 裕章
NTTコミュニケーション科学基礎研究所
-
福井 隆雄
フランス国立衛生医学研究所
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