外界変化に対する予測的感覚運動系調節と皮質運動野の関与(<特集>「脳・認知科学」及び一般)

概要

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外界が特定方向に対して不安定な状況下の運動では,不安定方向に対してスティフネスが上昇すること,そしてそのスティフネス調節には筋の反射活動が貢献していることが先行研究で示唆されている.本研究では,体幹前方への上肢到達運動課題中の後半に右あるいは左に一定力が加わるような力場を設定し,その力場に入る前の摂動に対する反射応答について検討した.その結果,筋が活動する方向と逆向きの力場が与えられた場合に,その反射応答は増大した.このことは,必要とされる筋活動を促す方向へと反射ゲインが増大することを意味している.そこで,この反射応答の変化に対する大脳皮質運動野の関与を検討するために,当部位に対して摂動に50ms先行して経頭蓋磁気刺激を与えたところ,観察されていた反射応答の変化は消失した.以上の結果から,筋の反射ゲインは外界とのインタラクションの方向,すなわち外界ダイナミクスの変化に応じて予測的かつ合目的的に調節されること,さらに,この反射ゲインは少なくとも皮質運動野の段階で既に設定されていることが示唆された.
社団法人電子情報通信学会の論文
2004-01-20