ニホンカモシカ糞便からのエルシニア及びサルモネラの分離と薬剤感受性

概要

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野生のニホンカモシカの糞便より,ズーノーシスの起因菌であるサルモネラとエルシニアの分離を試み,以下の成績を得た。1)サルモネラについては310頭(♂61,♀149)を対象に,セレナイト培地による増菌培養をも含めて分離を試みたが,全く陰性であった。2)エルシニアについては183頭(♂98,♀85)の盲腸便より,リン酸緩衝液による低温増菌培養で分離を行ったところ,Yersinia enterocoliticaが7頭(3.8%)から初めて検出され,29株を得た。しかし,Y. pseudotuberculosisは全く分離できなかった。3)分離したY. enterocoliticaの血清型,Wautersの生物型は,1頭由来6株がO:5B:1,2頭由来9株がO:22B:3,残りの4頭由来はO:1〜O:34に該当しないが,個体別に異る4つの血液型に属し,生物型は何れもB:1であった。4)O:22に属する2頭由来9株は,何れも25℃での運動性を欠き,白糖非分解性の非典型的性状を示した。5)分離した29株は,SM,TC,CP,KM,SA等常用抗菌剤に感受性であったが,APCに対しては血清型により差が認められた。6)そこで12種のペニシリン-セファロスポリン群抗生物質を用いて詳しく検討したところ,血清型によってMIC値に差があり,これら感受性を利用した分類の可能性が示唆された。
岐阜大学の論文
1983-12-15