エルシニアのβ-ラクタム系抗生物質に対する感受性

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エルシニアはY. pseudotuberculosisを除きβ-ラクタマーゼを産生する。このβ-ラクタマーゼ産生能に,エルシニアの菌種,生物型あるいは血清型によって,これらの分類の一助となりうるような差があるか否かを検討するため,各菌種のβ-ラクタム系抗生物質に対する感受性試験を行った。ヒト及び各種動物由来のY. enterocolitica B:1 81株,B:2 10株,B:3 30株,B:4 10株,Y. intermedia 177株,Y. frederiksenii 35株及びY. kristensenii 49株の計393株を用い,ペニシリン類及びセファロスポリン類抗生物質各11種に対する平均発育阻止濃度を求めて比較した。1)ペニシリン類抗生物質では,クロキサシリンに全株が,サイクラシリンに3株を除く全株が耐性で,逆に新しく開発されたピペラシリン,メズロシリン及びメシリナムに対しては全株感受性を示した。残りの6剤に対してはY. enterocolitica B:4の全株とY. intermediaのほとんどの株が耐性であったが,他の菌種では株によるばらつきがみられた。2)セファロスポリン類抗生物質では,ペニシリン類抗生物質より感受性株が多く,全株が耐性を示す薬剤はなかった。セフオキシチン,セファトリジン,セフロキシム,セフチゾキシム及びラタナモキセフなど第2,第3世代セファロスポリン抗生物質に対しては全株が感受性を示した。3)感受性に菌種や株によるばらつきがみられた両群の薬剤の中からアンピシリン,アパルシリン及びカルベニシリンとセファロチン,セファレキシン及びセフテゾールの各3剤を選んで感受性パターンを詳細に検討したところ,異菌種でも類似のパターンを示すものもあるが,概して菌種,生物型あるいは血清型に開連したグループ毎に共通した特定の感受性パターンがあることがわかった。このことからβ-ラクタマーゼ産生能の差がエルシニアの分類の一助となりうることが示唆された。4)この中で特にわが国のエルシニアによるヒト胃腸炎の原因となるY. enterocolitica B:4,O:3は6剤のうちセファレキシンのみに感受性で,また同じく病原性のあるB:2,O:5,27はアパルシリンとカルベニシリンのみに感受性である点で他の生物型あるいは菌種と明瞭に区別できた。
岐阜大学の論文
1987-01-10

エルシニアのβ-ラクタム系抗生物質に対する感受性

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