南極昭和基地沿岸におけるウニSterechinus neumayeri (Meissner)の繁殖期と初期発生
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
南極昭和基地の沿岸浅海域に分布しているウニSterechinus neumayeriの餌籠網を用いた採集を, 1999年2月から2000年2月の1年間にわたり試みた。水深20m前後に設けた複数の採集場所において, ウニは南極の秋から極夜を迎える6月までと晩春から夏に相当する10月下旬以降にそれぞれ餌籠で採集されたが, 7月上旬から9月中旬までは全く採取されなかった。秋から冬にかけて採取された個体の体腔内には生殖巣が明瞭に認められたが, 晩春以降に採取されたものの中には生殖巣が萎縮し, 体腔内がほとんどからの状態の個体が多数交じるようになった。4月および11月に採取した生殖巣が発達していた個体を用いて, 採卵・採精を行い, これらを人工授精させて受精卵の初期発生を観察した。春の受精卵は海水結氷温度付近で飼育した場合, 1時間以内に受精膜の形成, 20時間以内に第一卵割, 24時間で第三卵割が起こり, 2日で桑実胚, 3日で胞胚になった。5,6日後幼生は受精膜を破り遊泳胞胚に, 11日目に原腸が陥入し嚢胚となり, 18日ほどでプリズム型幼生にまで達した。その後10日間ほど飼育したが, プルテウス幼生期にまでは発生が進行しなかった。また, 飼育温度を1-5℃とやや高めに設定した場合は, 受精後, 卵割の異常と思われる現象が生じ, 発生はうまく進行しなかった。プリズム型幼生までの発生に要した時間は, 我が国に産するバフンウニ(Hemicentrotus pulcherrimus (A. Agassiz))の発生などと比べ(通常15℃ぐらいで飼育), ほぼ6倍程度遅かった。今回の採集結果と発生実験の結果から, 周年, 結氷温度付近で推移している南極沿岸域の海底上で, 本種は春期に産卵を開始し, そのプランクトン幼生はゆっくりではあるが植物プランクトンの生物生産が高まる夏季に成長するものと考えられる。
著者
-
福地 光男
情報・システム研究機構国立極地研究所
-
福地 光男
国立極地研究所
-
工藤 栄
国立極地研究所
-
佐藤 克文
国立極地研究所:(現)東京大学海洋研究所
-
土屋 泰孝
筑波大学下田臨海実験センター
-
佐藤 克文
国立極地研究所生物部門
-
佐藤 克文
国立極地研究所
関連論文
- カナダ北極圏ボフォート海におけるマリンスノーフラックスおよび内部の微小生物相の変化
- 雪上藻類の生息環境への生理的適応
- 南極昭和基地及びその周辺露岩域(野外研究サイトから(10))
- 「海鷹丸を用いた南極研究ワークショップ2008」報告
- 2006年南極医学医療研究集会報告
- 第49次南極地域観測隊夏隊における湖沼観測
- 南極における紫外線カット素材のコラーゲン人工皮膚への防御効果
- コラーゲン人工皮膚を用いた紫外線カット素材の紫外線防御評価
- 東南極宗谷海岸ラングホブデ域にある「氷河池(仮称)」の多年性雪堤防決壊:決壊に伴った撹乱による湖沼内とその周辺植生への影響に関する考察(英文)
- 南極湖沼における生態・地史学的研究計画(REGAL Project)-これまでの経過と今後の計画-
- 「ふじ」航路(1977-1978)における表面海水中のクロロフィルa量
- 1981-1982年「ふじ」航路におけるクロロフィルα量分布報告(英文)
- 2004-05年夏季のオングル海峡定着氷下における植物プランクトンと栄養塩の時系列変化
- 国立極地研究所のサイエンス・データマネージメントに関するワークショップ報告
- 「2004年南極における医療・医学研究に関する研究集会」の報告
- 夏季の南極昭和基地周辺の定着氷下におけるクロロフィルa及び硝酸塩濃度の時間変化
- 専用観測船による海洋観測に関する研究小集会(その2)」報告
- 1991/1992年夏季の南極昭和基地周辺の定着氷下における植物プランクトン細胞フラックス(英文)
- 夏季の南極昭和基地周辺における観測から得られた海氷厚と水中光量の経験的関係(英文)
- 1991/1992年夏季の南極昭和基地周辺の定着氷下におけるクロロフィルaの鉛直フラックス (英文)
- Canadian Arctic Shelf Exchange Study(CASES)計画についてのワークショップ報告
- ワークショップ「2001/2002年南極海複船時系列観測データ管理及び成果取りまとめ」報告
- 「第44次南極地域観測隊観測研究小集会-専用観測船」報告
- 「専用観測船による海洋観測に関する研究小集会」報告 -第43次隊報告及び第44次隊観測計画-
- 南大洋研究計画に関する日豪ワークショップ報告
- 1999/2000年夏季南極海インド洋区にて連続プランクトン採集器により 観測された表層動物プランクトン群集 (英文)
- 「南極域海洋研究における複合領域研究立案に関する研究小集会」報告
- JARE-39, -40「しらせ」航路に沿った夏季南大洋インド洋区における 表層水中の動物プランクトン現存量
- 「第44次南極地域観測における南極海海洋観測に関する研究小集会」報告
- 「第43次南極地域観測における研究観測に関する観測研究小集会-専用観測船による南極海海洋観測」報告
- 自然環境下でヒラメの行動の連続記録を可能とする加速度データロガー(平成15年度日本水産学会論文賞受賞)
- 海氷域におけるペンギン研究計画 (SIPENS) 実施報告(JARE-37~41次夏隊観測)
- 南極エンダービーランド・アムンゼン湾におけるアデリーペンギンの集団繁殖地の分布と繁殖数(英文)
- 胃内温変化から見た産卵期アカウミガメの摂餌
- 昭和基地周辺の南極湖沼における潜水調査報告
- 南極昭和基地沿岸におけるウニSterechinus neumayeri (Meissner)の繁殖期と初期発生
- 第23次越冬隊海洋生物観測(BIOMASS計画)報告1982
- 第33次南極地域観測隊報告 ─夏隊 (1991-1992) 及び越冬隊 (1992)の活動─
- アイスアルジーの光合成色素組成の光強度による変化
- アイスアルジーのディアディノキサンチンサイクル
- アイスアルジー光合成系の光強度変化
- 303 南極露岩域の内水面における溶存メタンおよび水盤気泡中メタンガス(環境エネルギー・化学)
- 南極湖沼通年観測用ビデオカメラシステムの開発と設置
- 海中造林のための接着剤を用いたカジメ藻体の移植
- 深層のフラックスから南極海表層の新生産が推定できるか? (総特集 南極海と地球環境)
- 1992年〜1994年の南極大陸沿岸定着氷域における沈降粒子フラックスの変動
- 外国共同研究報告-南極プリッツ湾での日豪海洋生物共同調査, 1992
- 高緯度海域におけるノルパックネット標準採集の特性-その2.荒天下に起こる過剰曳網とプランクトン現存量評価
- 南極リュッオ・ホルム湾における海水と海氷中の珪藻, およびそれらの底質中での保存
- 1978-1979年, 南極海インド洋区におけるクロロフィルα分布(英文)
- 1972-1973年, 南極海インド洋区におけるクロロフィルαの垂直分布(英文)
- 汽水性・淡水性腹足類イシマキガイの耐塩性
- イシマキガイの孵化期と胚発生期間
- イシマキガイの交尾嚢内における精包数の月変化
- 伊豆半島におけるイシマキガイの生息状況と河川環境
- 22. イシマキガイのペディベリジャーの形態と行動(平成 6 年度大会(東京)研究発表要旨)
- イシマキガイの成長の季節変化
- イシマキガイの移動活動の季節的変化
- 標識再捕法によるイシマキガイの移動方向の研究
- 伊豆半島那賀川におけるイシマキガイの産卵期と卵嚢数の月変化
- 昭和基地近くの海氷下で観察されたParalabidocera antarctica(橈脚類)の集群について(英文)
- 日本南極地域観測隊における医学研究の経緯と将来展望
- 夏季南極海インド洋区の氷縁域と季節開水面域における, 栄養塩とin vivo蛍光の分布に見られる空間パターン(Journal of Oceanography Vol.56(2000))
- 南極海沿岸域のクロロフィルaの垂直的分布と現存量(英文)
- サロマ湖から単離した珪藻7株の形態と増殖特性
- 1994年初春及び初夏の南極昭和基地周辺の定着氷下で採集された沈降粒子の組成
- 海氷生態系--サロマ湖に冬季に発達する季節海氷生態系を例に (特集生態系のいま)
- 北方海洋生態系の特徴 : (北方域の生態系と環境変動)
- 南極リュツオホルム湾における海底堆積物に含まれる有機物の解析
- 日本産アカウミガメ (Caretta caretta) の産卵後の回遊
- 気候変動が極域のプランクトン生態系に及ぼす影響
- 南極半島から発見されたHarpacticus furcatus LANGとそのコペポダイト期幼生について
- 南大洋の天然植物プランクトン群集を用いたクロロフィルα蛍光分析における抽出溶媒としてのN,N-ジメチルホルムアルデヒドと90%アセトンの比較(英文)
- 高緯度海域におけるノルパックネット標準採集の特性
- 簡便な調査法を用いた南極湖沼の湖盆形態とその水質・水生生物との関わり
- AM06-28-011 アザラシの潜航プロファイルに関する考察(生物流体・生体流体(3),一般講演)
- 「海鷹丸」南極航海で観測された海洋性エアロゾルの光学的厚さ
- 南太洋オーストラリア区における表層海洋中の二酸化炭素分圧の経年変化と季節変化
- 1985/86年夏季,南極海インド洋区における表面海水中のクロロフィル α 量の連続観測 (英文)
- 水生動物の体温維持に要するエネルギーコスト
- 海洋における虫類・ほ乳類・鳥類
- 北極海海氷域における基礎生産とエネルギー移動の時系列的変動の研究(PREFLA計画)(英文)
- サロマ湖(塩水湖)におけるice algae による着色海氷(英文)
- 「極域海洋研究における複合領域研究立案に関する研究小集会」報告
- 「極域海洋における物理・化学・生物海洋学研究の将来展望」に関する研究小集会報告
- 「しらせ」航路上における植物プランクトン量の微細分布(東京〜フリマントル, オーストラリア, 1991年)(英文)
- JARE-33第1レグ(東京〜フリマントル,オ-ストラリア)に沿ったピコ植物プランクトンの表面分布〔英文〕
- 海氷下動物プランクトン採集器"NIPR-1"について〔英文〕
- 「しらせ」搭載用コンテナ実験室の概要
- 南極研究科学委員会の連続プランクトン採集器専門家グループワークショップ報告
- 深く潜水する海鳥のストローク調節 : サウスジョージアムナジロヒメウ・ウミガラス・マカロニペンギンの比較
- Plankton shell fluxes and biological productivity in the subarctic regions of the Pacific Ocean
- Sediment trap experiments in the seasonal sea ice areas
- 「ふじ」航路(1976-1977)における表面海水中のクロロフィル-α量(英文)
- 第51 次日本南極地域観測隊越冬報告2010-2011
- 南極産硬骨魚の腎臓および膀胱の比較研究〔英文〕
- 豪日南極共同研究に関するワークショップの報告およびその関連成果
- 南大洋インド洋区で採集されたNORPAC ネット標本における動物プランクトン湿重量の再評価