ニホンシカによるシバの消化率について
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概要
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奈良公園のシバ草地に棲息する天然記念物ニホンシカの生活適正頭数を決定するための調査の一環として,ニホンシカによるシバの消化率を測定した.麻酔銃を用いて,3頭の成雌シカを捕獲し,糞尿分離の可能な飼育室内に入れ,5日間の馴致,ついで10日間の予備飼育ののち,5日間を試験期間として,全糞採取による消化試験を行なった.1号シカと2号シカにはシバ乾草,3号シカにはアルファルファ(2番刈)乾草を1日1回給与した.その摂取量は1日,体重1kg当たり,1号シカで平均13.8g,2号シカで18.8g,3号シカで12.9gであった.一般成分,NDFおよびADFについての見かけの消化率(%)は,つぎのようであった.シバの乾物,1号シカ,65.0,2号シカ,62.5;アルファルファの乾物,3号シカ,60.2,粗蛋白質,74.0, 73.3; 65.3,粗脂肪,61.7, 60.2; 48.8,粗せんい,64.0, 62.6; 61.1,NFE,65.4, 61.7; 60.8, NDF,64.9, 66.5; 65.0,ADF,64.4, 60.1; 60.0,ヘミセルロース(NDF-ADF),65.4, 72.6; 72.8.そして可消化粗蛋白質食量はシバとアルファルファで,それぞれ乾物当たり11.0%と10.3%,可消化養分総量は同じく,64.0%と58.4%であった.その結果,奈良公園に野生するニホンシカは,常食しているシバを消化する能力についてきわめてすぐれており,公園内のシバ草地の牧養力は,シバが生育する4月から9月末にかけての半年間は1ヘクタール当たり,成動物として12〜14頭と推定された.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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