ホルモン投与による乳腺の誘起発達に関する生化学的研究 (III) : 乳腺の発達に対するestrogenの生理作用についての一考察

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Wistar系ラットを用い, estrogen 30μg/dayおよびprogesterone 2mg/dayの投与により乳腺の発達を誘起させた後, ホルモンの投与を中止して組織の退行を行なわせ, 退行現象を示し始めた時期の乳腺を対象として, 組織の核酸量ならびに退行程度を測定し, その結果から, 乳腺の発達に対するestrogenの生理作用について考察を行なった。結果は次の通りである。1. estrogenを投与しprogesteroneのみを中止して退行させた場合と, 両ホルモンともに中止して退行させた場合とにつき, 退行の各時期における乳腺の核酸量をdry fat-free tissueをbaseとして表わして比較した結果から, 後者の場合には, DNAより細胞質成分の方がより速かに減少することを推測した。2. estrogenおよびprogesteroneともに中止することにより退行状態を示し始めた組織に, 両ホルモンを再投与した場合のdry fat-free tissue当りの核酸量の変化から, 両ホルモンの投与により乳腺の細胞質成分が急激に増加することを推測した。なお, estrogenのみを再投与した場合にも細胞質成分の増加を推測し得たが, progesteroneのみの再投与の場合には細胞質成分の増加は起らないものと推測した。3. estrogenを投与しprogesteroneのみを中止することにより退行状態を示し始めた組織に, 両ホルモンを再投与した場合のdry fat-free tissue当りの核酸量および乳腺の再発達の程度の測定から, estrogenを投与しつつ退行させた乳腺は, ホルモンの再投与による再発達の開始に, 好都合な生理的状態を保ちつつ退行していることを推測した。4. 以上の結果から, estrogenは乳腺の発達に必要な細胞質成分の生成に関与しているものと考えられる。
神戸大学の論文

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