甘藷より分離したBacillus属のマセレーション酵素について(第1報) : Bacillus sp.KYS-7によるマセレーション酵素の生産とその2,3の性質
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概要
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現在市販のペクチナーゼはペクチンエステラーゼを除いてすべて真菌類起源であり, そのマセレーション活性の至適pHは酸性側にある.われわれは生甘藷より至適pHを中性にもつマセレーション酵素を生産するグラム陽性好気性桿菌(Bacillus sp.KYS-7)を分離した.そして, 細菌の同定テスト, 培養条件の検討ならびに培養瀘液を粗酵素として, その酵素学的2,3の性質を調べ以下の結論を得た.1.本菌の生理的性質はすべてB.subtilisのそれと一致した.しかし, 内生胞子の位置ならびに胞子嚢細胞の膨らみが少し見られるところが標準株のIAM1069とは異なっていた.2.マセレーション活性は, トリス緩衝液でpH7.0に調整した粗酵素液に甘藷ディスクを入れ, 30℃に保温してその崩壊の程度を一定時間ごとに観察した.そして, ほぼ均質にバラバラに崩壊した時間の逆数(1/h)でもってマセレーション活性の強さを表すと, 酵素濃度に比例してほぼ原点を通る直線(検量線)が得られた.3.本菌のグルコース・ペプトン培地での培地当たりのマセレーション活性は振盪・静置培養ともほぼ同程度であった.そして, かなり広い温度範囲(23〜45℃)とpH範囲(4.5〜8)で生育とマセレーション活性が認められた.4.窒素源としては振盪・静置培養ともに, ポリペプトン, カゼイン, カザミノ酸のような蛋白質やその分解物を用いたときの方が, アラニン, グルタミン酸のような個々のアミノ酸を用いたときよりずっとマセレーション酵素をよく生産した.無機態窒素では硫安が比較的良好だった.5.硫安を窒素源として, 炭素源としての糖類を検討した.グルコースはガラクトース, ガラクツロン酸よりマセレーション酵素をよく生産した.そして, むしろペクチン, ペクチン酸は菌の生育もマセレーション酵素の生産性も非常に低く, グルコース・ペプトン培地に添加しても効果がなかった.したがって, 本酵素は構成酵素と思われる.グルコース, フラクトースおよびそれらのオリゴ糖, ラクトース, セロビオースなどは酵素の生産性が高かった, シクロデキストリン, グルクロン酸, CMCは生育もマセレーション酵素の生産もなかった.6.培養濾液を粗酵素として甘藷崩壊能としてのマセレーション活性の至適pH, 温度を測定した.それぞれ, 7.5と50℃であった.7.一般に細菌のマセレーション活性の実体はポリガラクツロン酸リアーゼ(PGL)であると言われており, そのPGLはCa^<2+>によって著しく活性化を受ける.本菌のマセレーション酵素はCa^<2+>, EDTAのいずれの存在下でも活性の減少が観察された.NaClにより反応液のイオン強度を高めたときも部分失活が生じた.8.マセレーション活性が, ペクチン分解酵素とペクチン酸分解酵素のどちらに, より密接な関係にあるかを調べるため阻害実験を行った.本質的にチャージを持たないペクチンの方が, ペクチン酸, ガラクツロン酸より強い阻害効果が認められた.
- 鹿児島大学の論文
- 1987-03-16
著者
-
菅沼 俊彦
鹿児島大 農
-
永浜 伴紀
鹿児島大学農学部
-
藤本 滋生
鹿児島栄養専門学校
-
藤本 滋生
澱粉利用学研究室
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菅沼 俊彦
澱粉利用学研究室
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永浜 伴紀
澱粉利用学研究室
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福元 哲郎
澱粉利用学研究室
-
池水 陽子
澱粉利用学研究室
-
中間 勝之
澱粉利用学研究室
-
永浜 伴紀
鹿児島大 農
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