気体巻込み方式塔型醗酵槽による揮発性基質の醗酵について

概要

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好気醗酵に一般的に使用されている撹拌槽では, 通常, 撹拌と同時に多量の通気を行なう.醗酵基質として揮発性の物質を用いる場合, 通気攪拌操作の基質揮発におよぼす影響は大きいと推定される.一方, 気体巻込み方式により通気を行なう本醗酵槽では, 既報のようにその量はきわめて少なく, 従って基質の揮発およびそれに起因する醗酵生産物の収量低下を抑えることができると考えられた.本報告では, これらの点について検討する目的で, 揮発性物質としてイソプロパノールおよびエタノールを採用し, 撹拌槽および本醗酵槽の種々の操作条件下でそれらの揮発量を測定するとともに, イソプロパノールを基質とする菌体培養およびエタノールを基質とする酢酸醗酵を試験した.撹拌槽における供試アルコールの揮発量はかなり多く, 特に通気量による影響が顕著であった.例えば通気量1 vvm(撹拌200〜400 rpm)のとき, イソプロパノールは30時間で, エタノールは46時間で, それぞれ初発量の50%が揮発してしまうことを認めた.これに対して, 本醗酵槽ではアルコールの揮発損失はきわめて少量であった.アルコールの揮発と通気量との関係については次式を得た.イソプロパノール : 1n(C_L)/(C_i)=-0.38×10^<-3>qt エタノール : 1n(C_L)/(C_i)=-0.25×10^≪-3>qt C_i=液中のアルコール初濃度, C_L=t時間後の液中アルコール濃度, q=通気量(vvm), t=通気時間.イソプロパノールを基質とする培養の結果, 攪拌槽では基質の揮発損失により菌体収量は減少したのに対して, 本醗酵槽での菌体収量は撹拌層の約1.6倍増になった.また, エタノールを基質とする酢酸醗酵の酢酸収率(対アルコール)は, 撹拌槽では約69%であったのに対して本醗酵槽では約87%であった.これらの実験結果から, 撹拌槽では通気による基質の揮発損失が大きく, 醗酵の経済性を著しく損なうこと, 揮発性基質を使用する醗酵には本醗酵槽が有利であること, などが判明した.
社団法人日本生物工学会の論文

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