コラーゲンフィブリルの再構成条件と熱変性挙動
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概要
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溶液から再構成したコラーゲンフィブリルのマクロ構造の差異は, 再構成する時の環境条件により大きな影響を受けると考えられるから, 生成したフィブリル集合体全体の熱的構造安定性も, これに応じた影響を受けるものと想定される. 示差走査熱量測定 (DSC) は, 分子のマクロな集合状態に関するシグナルを提供するので, 本研究では, 広範な環境条件下で再構成したフィブリル集合体のDSC測定下での熱変性挙動と, 再構成条件との関係を検討した. すなわち, 濃度の異なる中性塩可溶性コラーゲン溶液 (0.05〜0.5%) を種々のpH (pH5〜8), イオン強度 (0.1〜300mM) および温度 (4〜30℃) のリン酸緩衝液に対して透析してフィブリル集合体を調製し, その熱変性挙動をDSCで測定した. 再構成時のコラーゲン濃度を0.05%から0.5%に増すと, フィブリル集合体の熱変性温度は, 56℃ から53℃ へ低下した. 再構成時のpHは, 6〜8の範囲ではフィブリル集合体の熱変性挙動にあまり影響せず, 比較的熱安定性の高いフィブリル集合体 (熱変性温度, 56℃) が生成した. しかしpH5では, 熱変性温度の低い (43℃ で, 溶液状のコラーゲンの変性温度に匹敵する) フィブリル集合体を与えた. 透析時の緩衝液濃度が1-30mMの時, 比較的熱安定性の高いフィブリル集合体が生成し, 0.1mMでは通常のフィブリル集合体と溶液状のコラーゲンとの中問の熱安定性を示すフィブリル集合体が生成することを認めた. 透析温度の影響は最も顕著であり, 温度が高い程熱安定性の高いフィブリル集合体が形成された. これらのことから, コラーゲン濃度, pH, イオン強度および温度等の再構成条件が, フィブリル集合体の構造安定性の調節因子として重要であることを認めた.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
著者
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高橋 幸資
東京農工大学農学部応用生物科学科
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高橋 幸資
東京農工大学農学部
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高橋 幸資
東京農工大学
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白井 邦郎
東京農工大学農学部
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和田 敬三
東京農工大学農学部農芸化学科
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粟津 則和
東京農工大学農学部
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和田 敬三
東京農工大学
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