アミノ酸および関連食品成分による澱粉の熱的性質の制御に関する研究(受賞論文)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
澱粉は加熱により糊化して特徴的物性を呈する。しかし,しばしば過度の糊状感を呈したり,冷却により種々の物性がしだいに退行したりして食品の価値が損なわれる。そのため,これまで多くの工夫が試みられてきたが,我々は,アミノ酸や関連食品成分による糊液粘度,糊状感,老化,衣のドライ感等の熱的性質の制御の可能性を追求している。1.アミノ酸およびペプチドによる澱粉の糊化・老化制御:アミノ酸は,濃度依存的に糊化温度を上昇させ,糊状感の改善につながる膨潤・粘度の著しい低下をもたらす。その制御は可逆的で,特に,LysやGluのような荷電アミノ酸は正味荷電の絶対値に依存して顕著な効果を示し,その制御機構は澱粉との結合力の差異に基づく。正味荷電が異なる2種のアミノ酸が共存する場合,その効果は相乗的に現れ,同種荷電のアミノ酸の場合は単純和となる。LySやGluは,澱粉の会合や凝集体の形成を促進する一方,規則構造の再形成を若干抑制するがその程度は比較的小さい。2.アミノ酸/ペプチド食品素材(APRM)による澱粉の糊化・老化・水分散逸挙動制御:野菜漿液やタンパク質加水分解物のようなAPRMは,その荷電アミノ酸含量に依存して糊化温度を上昇させ,膨潤を抑制する。老化には著しい影響を与えないが,荷電アミノ酸含量の高いAPRMを用いることで,結晶構造の再形成が抑制できると考えられる。APRMを添加した澱粉-水系のモデルバッターの水分散逸を容易にし,ドライ感の増強に寄与すると考えられる。
- 日本応用糖質科学会の論文
- 2011-01-20
著者
関連論文
- 野菜漿液により制御した馬鈴薯澱粉の糊化・老化挙動
- 2種のアミノ酸の組合せによる馬鈴薯澱粉粒の糊化挙動
- 澱粉-ε-ポリリシン-糖脂肪酸エステルおよびε-ポリリシン-糖脂肪酸エステル複合体は乳化能, 抗菌活性および馬鈴薯澱粉の熱挙動の制御能を示す
- カルボキシメチルデキストラン(CMD)の装飾によるβ-ラクトグロブリン(β-LD)の免疫原性の低減化 : 食品
- カルボキシメチルデキストラン(CMD)の修飾によるβ-ラクトグロブリン(β-LG)の免疫原性の低減化 : 食品
- アミノ酸との複合によるタピオカ澱粉の糊化挙動の改質
- メイラード反応を介したε-ポリリシン結合による馬鈴薯澱粉の改質
- エクストルーダ処理による不溶性溶融架橋澱粉
- コラーゲン-可溶性卵殻膜タンパク質マトリックス再構築からの複合フィルム
- 低分子エラスチンペプチドの抗酸化能 : 食品
- ハイブリッド化による多糖,タンパク質のマルチ機能改変
- β-ラクトグロブリン(β-LG)-サイクロデキストリン複合体の乳化能、酸化抑制能 : 食品
- β-ラクトグロブリン(β-LG) : アルギン酸オリゴ糖複合体の構造と特性 : 食品
- 酵素処理澱粉の蛋白質結合による改質 : 食品
- ブタ真皮不溶性コラーゲン中の2タイプの small プロテオデルマタン硫酸
- アミノ酸・ペプチド結合による澱粉の機能改変
- 抗菌乳化剤による澱粉の糊化・老化調節
- 澱粉を粒体であり続けさせるか,させないか (特集 日本応用糖質科学の新しい展開)
- 複合澱粉および澱粉系食品の物性挙動の解明
- 澱粉技術の現状と展望
- 温水抽出物による焼海苔の呈味性評価
- 食用ペプチド結合澱粉の開発 (特集 澱粉の開発と食品への新しい応用)
- 乾海苔の5' イノシン酸とその酵素的生成
- ゼラチンのゲル物性と機能
- ゼラチンの物性と機能
- 天然高分子の熱分析
- 比較的低水分食品中澱粉の糊化温度
- アミノ酸および関連食品成分による澱粉の熱的性質の制御に関する研究
- ブタ真皮由来プロテオデルマタン硫酸のインビトロコラーゲンフィブリル形成に対する役割
- 豚骨不溶性コラ-ゲンのゼラチン
- ペプシンの繰返し可溶化処理によるコラ-ゲンマトリックスの再構築制御
- 2種の豚真皮プロテオデルマタン硫酸の分難とコラーゲン線維形成能(生体高分子化学-多糖類-)
- コラーゲンの線維形成に対するプロテオデルマタン硫酸のGAG鎖と中性糖の関与の程度(生体高分子化学-多糖類-)
- 線維径の異なるコラーゲンファイバー分散物の熱挙動
- コラーゲンフィブリルの再構成条件と熱変性挙動
- 再構成コラーゲンフィブリルの熱挙動
- クロム革のTsに対する有機酸根の寄与〔英文〕
- 澱粉の糊化と保持塩の関係
- 食品の熱分析
- アルカリ前処理による酸分散体コラーゲンの分子構造の制御
- アミノ酸および関連食品成分による澱粉の熱的性質の制御に関する研究(受賞論文)
- Dp1-5 糖脂肪酸エステル、リシン結合澱粉の効率的調製(澱粉の改変,一般講演,日本応用糖質科学会平成24年度大会(第61回))
- Dp1-4 オレイン酸結合澱粉(OA-PS)の特徴(澱粉の改変,一般講演,日本応用糖質科学会平成24年度大会(第61回))
- Dp1-6 コラーゲンペプチド架橋澱粉の創出(澱粉の改変,一般講演,日本応用糖質科学会平成24年度大会(第61回))