再構成コラーゲンフィブリルの熱挙動
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
溶液中のコラーゲン分子は,適当な環境条件下でフィブリルを再構成する.本研究では,この再構成コラーゲンフィブリルの熱変性挙動を示差走査熱量測定(DSC)により,分子内に存在する架橋(少量の分子間架橋も含む)やフィブリルの集合状態との関連で検討した.すなわち豚皮より抽出した酸可溶性コラーゲン(ASC),中性塩可溶性コラーゲン(NSC)およびこれらのペプシン処理物(PASCおよびPNSC)の分子分散溶液から,種々の条件でフィプリルを再構成し,そのDSCを行なった.いずれのフィブリルも,そのDSCパターンにおいて明らかに熱変性による2つの吸熱ピークを示した.分子内架橋の少ないPASCやPNSCおよびNSCの吸熱ピークは,架橋の多いASCより約10°C低温度領域に検知された.フィブリルの熱変性処理条件をコントロールすることにより,低温側吸熱ピーク成分と高温側ピーク成分を分離して両者の分子内架橋の量を調べたが,相違は認められなかった.低温側ピ-ク成分のみを熱変性させて除き,高温側ピーク成分のみを未変性のまま再び酢酸に溶解後,フィブリルを再構成してみると,DSC曲線に再び2つの吸熱ピークが現われた。このことは,DSCにおける2つの吸熱ピークが,熱変性温度の異なる2つの成分の存在を反映しているのではなく,フィブリルのマクロな集合状態の差を反映していることを示唆している.比較的希薄な濃度の溶液からASCフィブリルを調製したところ,吸熱曲線は約10°C低温側にシフトするとともに,単一のピークを示すことを認めた,以上のことから,フィブリル化したコラーゲンの熱的構造安定性には,分子内架橋のような分子自体の構造の差異に加えて,フィブリルの集合状態のようなマクロな高次構造の差異が大きな影響を及ぼすと考えられる.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
著者
-
高橋 幸資
東京農工大学農学部応用生物科学科
-
高橋 幸資
東京農工大学農学部
-
高橋 幸資
東京農工大学
-
白井 邦郎
東京農工大学農学部
-
和田 敬三
東京農工大学農学部農芸化学科
-
吉村 圭司
東京農工大学農学部
関連論文
- 野菜漿液により制御した馬鈴薯澱粉の糊化・老化挙動
- 2種のアミノ酸の組合せによる馬鈴薯澱粉粒の糊化挙動
- 澱粉-ε-ポリリシン-糖脂肪酸エステルおよびε-ポリリシン-糖脂肪酸エステル複合体は乳化能, 抗菌活性および馬鈴薯澱粉の熱挙動の制御能を示す
- カルボキシメチルデキストラン(CMD)の装飾によるβ-ラクトグロブリン(β-LD)の免疫原性の低減化 : 食品
- カルボキシメチルデキストラン(CMD)の修飾によるβ-ラクトグロブリン(β-LG)の免疫原性の低減化 : 食品
- アミノ酸との複合によるタピオカ澱粉の糊化挙動の改質
- 回収牛毛からの可溶化タンパク質画分の理化学的性質
- 第23回IULTCS国際会議報告とドイツ羊毛研究所の紹介
- メイラード反応を介したε-ポリリシン結合による馬鈴薯澱粉の改質
- エクストルーダ処理による不溶性溶融架橋澱粉
- コラーゲン-可溶性卵殻膜タンパク質マトリックス再構築からの複合フィルム
- 低分子エラスチンペプチドの抗酸化能 : 食品
- ハイブリッド化による多糖,タンパク質のマルチ機能改変
- β-ラクトグロブリン(β-LG)-サイクロデキストリン複合体の乳化能、酸化抑制能 : 食品
- β-ラクトグロブリン(β-LG) : アルギン酸オリゴ糖複合体の構造と特性 : 食品
- 酵素処理澱粉の蛋白質結合による改質 : 食品
- ブタ真皮不溶性コラーゲン中の2タイプの small プロテオデルマタン硫酸
- アミノ酸・ペプチド結合による澱粉の機能改変
- イオン交換クロマトグラフィ-によるクロム錯体の組成分析と鞣皮性の検討
- マスク化クロム液のゲルクロマトグラフィ-画分のコラ-ゲンと反応性
- 靴の衛生学的検討(第2報)靴内汗成分の挙動と蓄積
- 靴の衛生学的検討(第1報)-靴素材による靴内気候と着用感-
- 革製品の衛生学的研究(第1報) : 着用済み靴に蓄積された電解質の検討
- 抗菌乳化剤による澱粉の糊化・老化調節
- Xenopus oocyte細胞質に存在する新規mRNA結合蛋白質の解析
- 澱粉を粒体であり続けさせるか,させないか (特集 日本応用糖質科学の新しい展開)
- サメ, ブタ及びウシ皮コラーゲンのホルムアルデヒド及び塩基性硫酸クロムに対する反応性
- ブタ, ウシ皮との比較におけるサメ皮コラーゲンの理化学的性質
- 再鞣剤の皮への結合と酸膨潤に対する抑制効果の比較〔英文〕
- 複合澱粉および澱粉系食品の物性挙動の解明
- 澱粉技術の現状と展望
- 温水抽出物による焼海苔の呈味性評価
- 食用ペプチド結合澱粉の開発 (特集 澱粉の開発と食品への新しい応用)
- 乾海苔の5' イノシン酸とその酵素的生成
- ウェットホワイトシェービング屑のゼラチン原料への利用
- ゼラチンのゲル物性と機能
- ゼラチンの物性と機能
- 天然高分子の熱分析
- コラ-ゲンフィブリルの再構成条件と熱変性挙動
- 再構成コラ-ゲンフィブリルの熱挙動
- 比較的低水分食品中澱粉の糊化温度
- アミノ酸および関連食品成分による澱粉の熱的性質の制御に関する研究
- Clostridium混合培養系におけるゼラチン分解物のゲルクロマトグラフィーによる研究
- コラーゲン分解Clostridiumの混合培養系におけるアミノ酸残基の変動
- 豚革製造における再石灰づけ期間の短縮
- 再鞣クロム豚革製造における準備工程の改善
- 革とコラーゲン : 構造とその特性(伝統産業に学ぶ : 新素材・バイオテクノロジーのルーツ)
- ブタ真皮由来プロテオデルマタン硫酸のインビトロコラーゲンフィブリル形成に対する役割
- 豚骨不溶性コラ-ゲンのゼラチン
- ペプシンの繰返し可溶化処理によるコラ-ゲンマトリックスの再構築制御
- 2種の豚真皮プロテオデルマタン硫酸の分難とコラーゲン線維形成能(生体高分子化学-多糖類-)
- コラーゲンの線維形成に対するプロテオデルマタン硫酸のGAG鎖と中性糖の関与の程度(生体高分子化学-多糖類-)
- 線維径の異なるコラーゲンファイバー分散物の熱挙動
- コラーゲンフィブリルの再構成条件と熱変性挙動
- 再構成コラーゲンフィブリルの熱挙動
- クロム革のTsに対する有機酸根の寄与〔英文〕
- 2000年アジア国際皮革科学技術会議特別セッションから"21世紀皮革産業の展望"
- 創立40周年記念特集:中国との技術交流 (〔日本皮革技術協会〕創立40周年特集)
- なめしにおけるクロム塩の代替のための標準処方
- 昭和61年度〔日本皮革技術協会〕革および関連材料試験法専門委員会報告
- 昭和60年度皮革および関連材料試験法専門委員会報告
- クロム・グルタルアルデヒド複合鞣しにおける加脂剤の挙動
- IULTCS〔国際皮革技術者化学者協会連合会〕第17回国際会議講演紹介-2-再鞣・染色・加脂および分析・試験法
- 澱粉の糊化と保持塩の関係
- 石灰処理による豚皮コラーゲシめ性状変化
- 成熟度の異なる豚皮コラーゲンのペプシン処理物
- 豚皮不溶性コラーゲンの性状
- クロム錯イオンのイオン交換樹脂による分析(第3〜4報) : 第3報スチレン系陽イオン交換体と陽電荷クロム錯イオンの交換 第4報ポリスチレンスルホン酸とAmberlite,IR-4Bによるクロム錆イオンの分析
- 牛皮の鮮度低下過程におけるClostridiumの関与:好気性細菌との混合による効果
- 食品の熱分析
- 小腸由来デコリンの構造的特徴およびI型コラーゲンフィブリル形成への影響
- 小腸由来デコリンの構造的特徴およびI型コラーゲンフィブリル形成への影響
- 比較的低水分下でのタンパク質の熱的性質
- 示差熱分析による澱粉の熱的性質の検討
- 示差熱分析による食品中澱粉の熱的性質の検討 食品関連高分子の熱的性質(第2報)
- 準備工程における原皮の組織学的研究 : I. 判定基準の設定およびそれによる原皮観察
- クローム鞣の研究 : (第3報)比濁度一定部位に於けるクロームの皮への結合
- 中国との技術交流
- 第23回IULTCS国際会議報告とドイツ羊毛研究所の紹介
- 床皮からのエステル化コラーゲンのペプシンによる可溶化とその可溶化生成物の性質
- 畜産物に関する研究の動向 : IV. 皮革関係
- アルカリ前処理による酸分散体コラーゲンの分子構造の制御
- 好気性菌との混合培養におけるClostridiumの生育挙動とコラーゲン分解力の変動
- 食用ゼラチン
- 非アクオ金属錯塩による皮蛋白中の官能基の推定-2-
- クロム鞣におけるアニオンクロムの作用-1-
- アミノ酸および関連食品成分による澱粉の熱的性質の制御に関する研究(受賞論文)
- Dp1-5 糖脂肪酸エステル、リシン結合澱粉の効率的調製(澱粉の改変,一般講演,日本応用糖質科学会平成24年度大会(第61回))
- Dp1-4 オレイン酸結合澱粉(OA-PS)の特徴(澱粉の改変,一般講演,日本応用糖質科学会平成24年度大会(第61回))
- Dp1-6 コラーゲンペプチド架橋澱粉の創出(澱粉の改変,一般講演,日本応用糖質科学会平成24年度大会(第61回))